カテゴリ:建築
もう20年以上も前のことであるが、月200時間以上の残業が当たり前。正直、辛かった。 元上司は、曲線が多く手間の掛かる設計をし、僕は付き合わされた。曲線の多い設計は、直線の多い設計に比べ格段に手間が掛かる。場合によってはコストも掛かるので工事費を抑えるため設計のやり直しをすることもある。会社全体が慰安旅行に行った時も2人で会社に残って仕事をしている様子は、会社のなかでも異質な存在だった。業務の原価管理という視点からは完全に外れたやり方だったと思うが、そうして設計した建物が、会社で初めて北海道や全国での賞を複数受賞し。やってきた事が全く無駄では無かったことは理解できた。 元上司は、その後社長になり、会長になった。僕は、2度転職し、自分で事務所を始めた。 定規というのは普通直線を引く道具だが、この定規には直線を引く箇所は無い。曲線を引くための定規なのだ。当時は今ほどコンピューターを使っていなかったので大きな曲線を描くのにはこういった特別な定規が必要だったのだ。北海道で一番大きな設計事務所でもこんな定規を持っているのは僕の上司しかいなかった。上司が居ないときにこの定規を借りて曲線を引きまくり、やがて自分の引き出しの常備品にしてしまった。 今回、札幌に行き、元上司に 「この定規覚えてますか?」と聞くと、 「もちろん覚えてる。無くなったからもうひとつ同じのを買ったよ。」とのこと。 「すみません。つい返しそびれてしまいました。」というと。 「改めて、あげるよ。」笑って手渡してくれた。 曲線専用のこの定規を渡され、手間をかける事を忘れるなと言われたように感じた。 かなや設計 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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