カテゴリ:作物
愚かさと怒りだけを胸に秘めて
しかし、それはどんな恨みでもない、この秋の空のように あるいは生まれ島の海のように 生きているということ 数少ない友と 死んでしまった友との間で どうバランスを取るか 日暮れははやい ときには音楽があり いつも酒があり たまには本を読む 映画を観て泣き、くだらない論議にキレル そういうスタイルがなじみで、だからたいてい健康だ 割ってゆくことと足してゆくことの計算ができない 薄めたウイスキーを酔っ払うまで飲み続ける そのあと冷たい床に正座して風邪をひく この愚かさの芯を遠くから見つめたいと思うが たぶん死ぬまで このままで持ちこたえるのだろう 小さな怒りをばねにして 「夜更け自体のもらすため息」と鱒二は書いたが そういうため息をきみとかわしてみたい しかし、孤独ではない 打ち負かされているのでもない もちろん泣いているのでもない この秋の空のように 生まれ島の海のように 愚かさと怒りだけで生きてゆく 明日は三島の命日 彼の僚友を気取る石原は湘南の海岸で 芸能人を集めて「太陽の季節」の三千万円近くしたという記念碑の 除幕式で相好を崩す 35年前学生だったぼくは、その日 ポケットウイスキーを二本買い、そのまま飲みほした 凄惨な死にざまを知ったのは、それからずっと後だ そして、憑かれたように身内同士での殺し合いがはじまり、「回収できない否定性」の 時が回りだしたのだ 逃亡した島がぼくを救ってくれた たぶん そして愚かさと怒りが ああ 夜更け自体がため息をもらす 死んだ友人と 数少ない友人の間で Ask me nowとモンクのすぐわかる率直さで きみは言うのだ 訊ねるべきなにもないぼくに お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
November 24, 2005 09:19:20 PM
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