詩人たちの島

　３０度を越えたというが、心寒い日が続く。朝早く教室に行き、黒板をきれいに拭く。クリーナーを洗う。それから教室に散乱しているペットボトルとかゴミを片付ける。今のところ、私にできるのはこれだけという気持である。一仕事すると汗びっしょり、しかし充実感があるわけではない。そういう毎日。come rain or come shine、そのうちきみたちと一緒に幸福になろう。一緒に不幸になりたくはないよね。
　サイードの「文化と帝国主義」を読み始めた。今日職員会議で読んでいたら、猛烈に眠くなって、十分くらい熟睡してしまった。バランスがとれない。

　同僚から新潮カセット文庫「小林秀雄講演」のテープを２巻借りる。今から聴いてみよう。まず「文学の雑感」と題されたもの。…。その半分ほどで今日は終わり。こんな甲高い声で、こんな名調子で話す人だったのだ。驚いたのは、奥さんのことを「家のカカア」などという落語家のような呼び方で呼ぶことである。煙草をやめる決意をするのだが、ところが家のカカアが煙草のみでという言い方。そこで小林は次のように厳命する、いいか、おれはやめるけど、おまえは平気でおれの前で喫え、というものだ、そうしてはじめて煙草をやめるということが真実になるのだという。ライターも捨てない、煙草も捨てない、という止め方が小林の真骨頂である。この講演を主催した団体と出席者たちは小林を神様とあがめていて、そこが気に入らないけど、でも時を経てみると、そういうことはどうでもよくなり、実に面白い、生き生きしたお爺さんがいるという感じがした。少し元気がでたかもしれない。