1
物語の始まりはそれぞれに
かがやく夢を抱いているだろう
雨上がりの朝に張り渡すクモの糸
ここからそこ そこからまたその先へ水滴の
透明な玉のひとつぶひとつぶを連ねて
すべてはそれら
鈴なりの小太陽から始まってゆくのだとすれば (豊美)
2
誰かが
Look for the silver liningと歌っている
悲しみと敵対の雲に覆われた世界でも
どこかで太陽は輝いていると
分離壁のそれぞれの内側で
誰かが歌っている
苦さをかみしめて 雨にうたれながら (英己)
3
どんなことにも よい半面があってくれなければ
と歌の願いに染まって 夢からさめ
まだ明けきらない 弱い光に
不随意の装置が動きだすのを 私は感じとった
まだ語られていない物語の
小さな窓がひらく
遠いとも近いともいえない そこに
姿は見えないが
人がいて その心臓がしずかに打っている (健二)
(めも)
連詩と歌仙を同時並行でつくってゆくという未知の経験に大いに興奮しています。必ずや自分の詩にこの経験ははねかえってくると思います。今はまだ定かには言えないが、この時期常にも増してみょうな抑鬱状態にある私の実生活をも変えてくれる何かが、この二つの「詩」の製作から生まれることを期待しつつ。