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詩人たちの島

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October 14, 2006
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カテゴリ:連詩

物語の始まりはそれぞれに
かがやく夢を抱いているだろう
雨上がりの朝に張り渡すクモの糸
ここからそこ そこからまたその先へ水滴の
透明な玉のひとつぶひとつぶを連ねて
すべてはそれら
鈴なりの小太陽から始まってゆくのだとすれば     (豊美)

誰かが
Look for the silver liningと歌っている
悲しみと敵対の雲に覆われた世界でも
どこかで太陽は輝いていると
分離壁のそれぞれの内側で
誰かが歌っている
苦さをかみしめて 雨にうたれながら       (英己)

どんなことにも よい半面があってくれなければ
と歌の願いに染まって 夢からさめ
まだ明けきらない 弱い光に
不随意の装置が動きだすのを 私は感じとった
まだ語られていない物語の
小さな窓がひらく
遠いとも近いともいえない そこに
姿は見えないが
人がいて その心臓がしずかに打っている       (健二)

光の少ない日には
身近な発見を数えよう
窓辺の鉢植えのサボテンについた花芽
幼な児の口元に出現した真っ白い乳歯
こんにちわ
カタコトがこぼれる
水道の蛇口が開かれる
匙が、コップが、皿が、薬缶が、テーブルが
身の回りのあらゆる些事がうたいだす
懐かしいあの小声の唄                (豊美)

暮れてもまだ光の残っている秋の空
「汝は一つの死体をかかえている小さな魂にすぎない」
マルクス・アウレリウスの言葉をかみしめながら地上を歩く
水は増水の汚れをすっかり払い落とし、澄んだ川として流れる
樹木は緑の剣先を凋落の予感ゆえに懸命にのばし
黄色の蝶がコスモスの花の上を
夏の愛を想起するかのように踊っている
この足の一歩が
小さな魂の足跡である
笑う仮面や、泣く仮面
「さんたんたる配慮」と文三は言うが
この心臓の音の途切れるまで、あそこの緑のその向こうまで
澄明な秋を歩いてゆこう                        (英己)

ぎしぎしと鳴る床を歩いて
存在を証明した
飛べない魂
その夏の事情は キッチンの籠の
十数本の茄子となって艶やかに休み
「トルコでは、茄子の調理法を
五十くらいおぼえておかないとお嫁にいかれないよ」
庭仕事に戻る私は
本で読んだそんなセリフを思い出して
自分の死体からにじむものを薄くした
元気を出した ということだが
もう秋のゆうぐれだ
切り落とした枝と葉を大袋に入れ
光を 心の小屋の
闇のなかにしまって
茄子と酒をもって人に会いに行く        (健二)

 

(めも)

光を 心の小屋の
闇のなかにしまって
茄子と酒をもって人に会いにゆく

福間さんの上のフレーズはすごく印象的で、「心の小屋」にいつまでも残りそうだ。

(やがて八王子米に)






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Last updated  October 14, 2006 08:50:23 PM
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