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November 14, 2006
カテゴリ：作物
雑技
身体が曲がるときに 水が流れる しなやかさとたおやかさは水のせいだ 椅子を６脚積み上げても空には届かない でも、緞帳の一番上には届く きみはそこで微動だにしない倒立を披露することができるか かれはできた あまつさえ斜めにした天辺の椅子の上で片手倒立を成功させる これらがとてもいかがわしいのは 生活とともにあるからだという批判を かれはその姿勢で軽々と乗り越える そういうふうに見えた 見えたことはやったこととは全く異なる 私は椅子に座り脚を投げ出している かれは劇場の頂上で 「雑技」といわれるものを繰り出す 私は拍手する そういう交換が成り立つのは すべてのものやことがマルクスの言うように 貨幣として結晶するからだ 彼の天井近くでの水際立った倒立は 私の一ヶ月の給料の何分の一かで贖われている だから私は脚を投げ出して、身を自堕落にひねりながら 彼の演技に拍手できるのである しかし、しなやかさとたおやかさは水のせいだと思いたがる うつぶせになった少女の脚は背中を通り越してその笑顔を抱いている それを支えているのはかぼそい二本の手である あまつさえその一本を彼女は軽々と空中に浮かす 「雑技」と呼ばれることの幸せ われわれの生も考えてみれば「雑技」にすぎない
制令線を越えて、日本軍が上海から南京に侵攻したのは 御前会議での 作戦部長の「勇み足」を罰することができなかったせいだと言われている そういう用意もあると彼は天皇に言ってしまったのである この「勇み足」が十五年戦争の帰趨を予言している ここにあるのは 曲がるとかひねるとかねじるとか倒立するとか戻るとか転がるとか飛び跳ねるとか 一切の身体の「雑技」を禁じた、それゆえもっと野放図な「勇み足」でしかない 「雑技」は微動だにしない倒立を笑いながら演じる そこにあるのは、水際立ったバランスであり それを支えるのは肉体に浸透した無意識の計算である 作戦部長にあるのはただ傲慢の一撃であり、やがては我に返るしかない 侮蔑のブーメランである 制令線を越えて真っ直ぐに南京に伸びた兵站線を 倒立する彼のしなやかな筋肉や、笑顔をその足で抱く少女の蛇のようなその足が 「曲がる」ということに秘められた 意志と情熱で 曲げるであろう、曲げたということが歴史という身体には刻まれている
「勇み足」は 彼や少女の血肉を 切り刻み、川に投げ捨て、穴に投げ入れた、正確には、そうさせたのである 「勇み足」の、勲章をぶらさげた、硬直した首の上の、笑わない鬚のある「顔」
私は静かに退却することを学ぼう 上昇と下降のときの神経の繊細な働きや 成就したときの子どものような破顔、そこに留まることの危険を告知する 銅鑼の音 人生を描くというよりも、それを生きる、そこで終わるしかない 肉体と、その動かし方など 無数の死者をかかえながら 一人の肉体であること 小さな穴、大きな穴、そこに穴さえあれば そこを通過できるしなやかで、たおやかな精神 その穴や、窓を、いささかも傷つけることなく潜り込み、湧き出る 水のような身体を
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Last updated
November 14, 2006 10:33:34 PM
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