窓
そうだ、ずっと窓のことを考えていた
相原の立ち飲み屋の窓から見た6月の空
教室の窓から見た空
カーテンを少し開けて覗いた空
窓が切り取る世界
窓のないモナドは
眼をつむるしかない日々をひび割れて
おまえの首をつかみ、ひねりあげる窓のそとに
きつく折り畳まれて放り投げられた一つの紙礫
風に吹かれ転がり、雨にうたれてふやけ
踏みしめられてちぎれ、晴れた日には
誰かの晴れた魂がそれを拡げるだろう
一筋の光が差し込む窓の傍らで手紙を広げるフェルメールの女
獰猛なブルドッグに追いつめられる小さな猫を窓は見ていた
悪童たちの遊び
猫を殺せ、殺せ
小さな猫は窓の中に揺れる白いレースのカーテンを見た
そうだ
猫は悪童たちや猛犬のみから追いつめられているのではない
窓のなかに隠れている「人間性」からも追いつめられていたのだ
これは「ハム・オン・ライ」でブコウスキーが書いた断片
目覚め、家庭問題にとまどい、燃えさかる火に投げ込まれるまで
窓のなかで、コーヒーカップの染みに小さなおまえの帝国の版図を重ねる
「何回、窓を開け閉めしたら気が済むのだろうか?」
一筋の光が差し込む窓の傍らで手紙を広げるフェルメールの女は
追いつめられたブコウスキーの猫の鳴き声を
聴いただろうか?
追想のはてに
内も外もない大きな窓だけが
未来の岸辺に架かっている
この詩は、14日の国立の「福間塾」の例会に提出したものを、少し変えたものです。参加者のみなさんの素晴らしい詩(「窓」という題で書かれたもの)を読むことができて、久しぶりに出席したのだが、楽しかった。名司会者(臨時とはいうが)のユーモアあふれる進行も、凝っていたぼくの心をほぐしてくれました。
台風の雨のなか、三次会は「さかえや」で、ぼくのわがままに付き合ってくれたみなさんにお礼をいいます。小山さん、藤井さん、小貫さん、和田さん(返却するものをすっかり忘れてしまいました、ごめんなさい)、楽しかったです。岩田さんとぼくは気がつけばなぜか中神駅にいて、それほど我を忘れるほど酩酊したわけでもないのに、でも救助の専門技師木村君がかけつけてくれて、われわれは彼の車で無事各自の家に帰還できたのでした、なんという贅沢な日!