水難救助
台風が近づいていた 夜
おじさんとおじさんは
大きな手と手を仲良くつないで
とてもシアワセそうに
国立駅の改札の向こうに消えていった
生ビール、日本酒、冷やしトマト、コロッケ
詩の話
詩人の話
熱っぽく語っていたおじさんは
それを穏やかな表情で聞いていたおじさんに
「今日 きみに会えたことだけで十分です」
とシミジミ伝えていた
台風はまだ気配だけだったのだが。
南大沢に向かっていたおじさん
八王子に向かっていたおじさん
水をたくさん飲んだふたりは
難破した船の乗客のように
気がつくと
なぜか青梅線の中神駅にいて
救援を頼んだらしい
7月14日の福間塾の後のことを、小貫さんが詩に書いてくださった。今日は一日中、退職説明会なるものに出席していて、年金や退職後のさまざまな問題などが、事務的な言葉で一方的に説明されるのを聞いているうちに頭が痛くなり、心が冷えてきた。老後など、この日本で考えたって意味はない、などと荒んだ気持になって帰ったのだが、小貫さんのこの「おじさん」二人(もう一人の岩田さんは、ぼくよりずっと若いのだが)に寄せるエールが余計に心にしみたことである。作者には無断で、ここに載せて、あのとき(7月14日)の参加者みなの友情の記念にしたいと思う。小貫さん、素敵な詩をありがとう。これでまた救助されました。