「蛍」 鬼束ちひろ
時間よ 止まれ
この手に止まれ
一縷の雨は途切れて消える
誰も貴方になれない事を
知ってしまうそれを永遠と
呼ぶのだろう
想いは指を絡めるように
この夜を次第に燃やして行く
さよならの終わりを擦り抜けて
でも身体を抱く
蛍 この星を舞い上がれ
遠く近く照らして踊れ
その一瞬が永遠だと
貴方は教えてくれたひと
時間よ止まれ
この手に止まれ
光の影は薄れて落ちる
握り締めた二人の手のひら
汗ばむ熱を上げていく
側にいて側にいて繰り返し
今でも悲しみを抱く
蛍 この闇を舞い上がれ
涙で霞む夜空を踊れ
その一瞬が何もかもだと
貴方は教えてくれたひと
硝子越しでもかまわないと
私は無力さを晒して行く
愛なんてわずかなものを
頼りにしたあの夏を
蛍 この星を舞い上がれ
遠く近く照らして踊れ
その一瞬が永遠だと
貴方は教えてくれたひと
蛍 鮮やかに心を焦がせ
強く弱く光って踊れ
全てのときは一瞬だと
貴方は教えてくれたひと
貴方は教えてくれたひと
その一瞬からすべてが始まる
その一瞬ですべてが決まる
一瞬の繰り返しが永遠へと繋がっていく
貴方と出逢った瞬間があるから
今がある
そして未来がある・・・