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テーマ:日々自然観察(10123)
カテゴリ:その他の動物
日本産ムカデ類(ムカデ綱=唇脚綱)には、ゲジ目(所謂ゲジゲジの類)、イシムカデ目、オオムカデ目、ジムカデ目の4目がある。ゲジ目は歩肢が非常に長いので簡単に区別が付く。他の3目は歩肢の数で見分けることが出来る。イシムカデ目では15対、オオムカデ目では21か23対、ジムカデ目の仲間は肢が多く31対以上(「日本産土壌動物」に拠る)。但し、オオムカデ目、ジムカデ目は脱皮しても胴節(頭部以外の体節)数が変わらない成長の仕方(整形変態)をするのに対し、ゲジ目やイシムカデ目では、始めは脱皮に伴い胴節数が増加するがある段階以降は脱皮しても胴節数が変化しない半増節変態と呼ばれる生長の仕方をする(「多足類読本」に拠る)。従って、ゲジ目(歩肢15対)やイシムカデ目の場合は、幼体であれば15節より少ないこともある。
写真のムカデは歩肢は15対、イシムカデ目である。「多足類読本」に拠れば、他にこの目の特徴として胴節背板に異規性が認められ、第2、4,6,9,11,13胴節の背板は少し縦に短い。写真のムカデを見ると確かにその通りになっている。イシムカデ目で間違いないであろう。
さて、このイシムカデ、一体種類は何であろうか。歩肢の各節に棘(武装棘と言う)があり、眼が数個の極く少数の単眼から成る(最後の写真、但し、変態に伴い単眼数が増加する)ので、イシムカデ科(Lithobiidae)に属すと思われる。「日本産土壌動物」の検索表では、日本産イシムカデ科にはイシムカデ属とヒトフシムカデ属があり、前者は第1~13歩肢の付節が2節、後者では1節なので、容易に区別が出来ることになっている。 ムカデ類の歩肢の構成は、昆虫の脚とは異なり、基節、転節、前腿節、腿節、脛節、付節から成る。付節以外はそれぞれ1節ずつで、基節転節は短いから、長い節が5節であればイシムカデ属(Lithobius)、4節であればヒトフシムカデ属(Monotarsobius)と云うことになる。しかし、これが写真からはどうも良く分からない。4節の様に見えるところもあるし、もっと多い様にみえるところもある。
「日本産土壌動物」の解説を読むと、イシムカデ属は「体長10~20mm.触角は20~40小節」。一方、ヒトフシムカデ属の方は「体色は淡褐色のものが多く、体長10mm以下が多い.触角小節数20個以下.眼は数個の単眼が1列か2列に並ぶ」とある。 写真のイシムカデは、体長は1cm未満、触角は3番目の写真から判断すると19節、眼は数個の単眼が2列に並んでいる様に見える(下の写真)。これらから判断すると、ヒトフシムカデ属(Monotarsobius)と云うことになる。 しかし、イシムカデ属の単眼数についての情報は見つからなかったし、写真のイシムカデはもっと成長するかも知れず、触角は19節に見えるが先端部にもう1節あるかも知れない。かなり怪しい部分があるので、「ヒトフシムカデ属の1種?」と「?」を付けておくことにした。 尚、ムカデ綱に属す種は全て肉食である。こんなに小さいイシムカデでも、もっと小さいトビムシやダニなどを餌にしているとのこと。
このイシムカデ、写真を拡大してみると、意外に結構可愛い。また、最後の写真など、中々勇ましい感じがして、何となく支那の「龍」を思い起こさせる。どんな虫でも、先入観無く見れば、それなりに可愛いものなのかも知れない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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