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テーマ:日々自然観察(10123)
カテゴリ:昆虫(アブ、カ、ハエ)
ハエとなると、またややこしい検索の話になってしまう。まず、シマバエ科の特徴。鬚刺毛を欠き、後ろ向きの強い額眼縁刺毛を2対具え(下の写真)、触角第2節背面に1本の剛毛を持ち(下)、更に、脛節端付近の背面に1本の剛毛を具え(下)、且つ、後単眼刺毛が収斂する(3番目の写真)。写真のハエは確かに、その通りになっている。他に、触角刺毛に軟毛を持つ、Cu融合脈が翅縁に達しない、前縁脈に切れ目がない等の特徴があるが、これらは写真からは余り判然としない。しかし、まァ、シマバエ科で問題なし、としておく。
シマバエ科の属への検索は、(株)エコリスの「日本のシマバエ科 属への検索試案」を使った。この検索表の最初にある「C脈はR4+5脈の合流部まで黒色の小剛毛列を具える」でHomoneurinae亜科となり、更に「翅に模様がある場合,前腿節には櫛状の小剛毛を持つ」でHomoneura属に落ちる。このハエ、翅は殆ど透明だが、横脈(r-m脈とm脈)の周囲に僅かな曇りが見られる。
Homoneura属に関する論文としては、「Sasakawa & Ikeuchi (1985), A Revision of the Japanese Species of Homoneura」(Download可)がある。3部に分かれた長い論文だが、第3部にある検索表を辿ると、H. tridentataに落ちる。 この検索に関しては、少しややこしいので此処では省略する。写真のハエの顕著な特徴として腹部第5節に1対の黒斑が見られる(最後の写真)。検索表の最後のキーで漸くこの腹部第5節の黒斑の出て来たので、検索に誤りは無かったらしいと安心した。
種の記載を読むと、何と、腹部第5節背面に1対の黒斑があるのは、日本ではこのH. tridentataのみとのこと(他に台湾に2種ある)。日本産ならば、検索表を辿らなくても、この特徴だけでH. tridentataと云うことになるのである。 しかし、検索表ではこの特徴は一番最後の段階に書かれている。恐らく、斑紋の様なものは変化し易く、それよりも、翅の構造や毛の生え方の方がより本質的な分類学的特徴なのであろう。
しかし、双翅目の掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂・改」に拠ると、シマバエ科に関しては上記論文が出版された後に新種がかなり記載されたとのこと。或いは、腹部第5節に黒斑を1対持つ新種が出たかも知れない。そこで、一応「一寸のハエにも五分の大和魂・改」に、この点に関して御伺いを立ててみた。 何方からも異論は出なかった。また、バグリッチ氏もこのハエをH. tridentataとしているとのことである。H. tridentataとして問題無いと判断した次第である。
昼を過ぎて、またかなり暑くなって来た。気象レーダー像を見ると、近畿から北海道にかけて、彼方此方で雷雲が発達している。関東地方でも強い雨の降っている所が何個所かある。この辺り(東京都世田谷区西部)は余り雷雲の来ない場所だが、是非ともやって来て、ドンガラガッシャンと景気よくやって欲しいものである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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