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2010.11.15
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 毎年、秋になるとセイタカアワダチソウや「北米産原産シオンの1種(紫花)」にやって来る、やや小型のガガンボが居る。ガガンボという虫はややこしい双翅目の中でも特にややこしい連中で、撮っても種類が分かる可能性は殆ど無く、普段は撮影しないことにしている。

 しかし、この写真のガガンボ、口吻がある種のシギ類(ダイシャクシギ等のNumenius属)の様な形をしており、かなり特徴的である。しかもこの辺り(東京都世田谷区西部)では極く普通な種と言える。ヒョッとして分かるのではないかと思い、写真を撮ってみた。体長は約8mm、翅長は約7mmである。



Geranomyia gifuensis 1


「北米原産シオンの1種(紫花)」に来たヒメガガンボ科の

Geranomyia gifuensis.和名はまだ無い

右後肢が取れて無くなっている

(写真クリックで拡大表示)

(2010/11/02)

 ガガンボの様な、体が細く脚が異様に長い双翅目昆虫は色々な科に存在する。ガガンボ科の他に、近縁の科としてはシリブトガガンボ科、ヒメガガンボ科、オビヒメガガンボ科等があるが(これらを全てガガンボ科に含める研究者も居る)、一見非常に良く似ているにも拘わらず、それぞれ下目のレベルで異なる全く遠縁のガガンボダマシ科、コシボソガガンボ科、アミカ科等と云うグループもある。全く困った連中としか言い様がない。



Geranomyia gifuensis 2


羽ばたきながら吸蜜することも多い.偶然に翅を拡げたところが撮れた

吸蜜中も常に体を上下に揺すっている

(写真クリックで拡大表示)

(2010/11/02)

 これらの科の違いは、主に翅脈をみれば大体の見当が付く。しかし、1つの科の中でも翅脈にかなりの変化があるので注意が必要。写真のガガンボの翅脈(写真の解説を参照)を見ると、どうやらヒメガガンボ科の様である。

 ヒメガガンボ科には、口吻が体長よりも長く、しかも真っ直ぐなクチナガガガンボと云う種がある。しかし、口吻の細部を見ると、これとはかなり違う。


Geranomyia gifuensis 3


翅脈を拡大.前縁脈とR脈基幹の間にあるSc脈が無い様に見えるが

他のぼけた写真を見ると、Sc脈は前縁脈とR脈の間に存在しており

矢印Aの所で、Sc1とSc2(Sc-R)の2本に別れ

直後にSc1は前縁脈に、Sc2はR1に終わっている

矢印Bの所はどうなっているのか良く分からない

ヒメガガンボ科では、普通R1は前縁脈に合すが

ここではR2+3に繋がっている様に見える

(写真クリックで拡大表示)

(2010/11/02)

 北隆館の新訂圖鑑の解説を読むと、口吻の長いヒメガガンボ科のグループは他にも幾つか存在する。しかし、図版を見ても殆ど何も分からない。お手上げである。

 其処で、例によって双翅目の掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂・改」のお世話になることと相成る。此処には、達磨大師様と云うガガンボの権威が居られるのである。


Geranomyia gifuensis 4


横から見ると後肢の取れた跡が生々しい

常に体を上下に揺すりながら吸蜜する

(写真クリックで拡大表示)

(2010/11/02)

 達磨大師様は、一年程まえ白神山地の研究室に転勤され、研究棟の建設とか今かなりお忙しい筈なので、気長に御返事を待つつもりで居た。ところが、何と一時間も経たない内に御返答を賜った。

 「交尾器の詳細がわからないので「絶対に」とはいえませんが、ヒメガガンボ科ヒメガガンボ亜科のGeranomyia gifuensis Alexander, 1921 に一票.本州で記録されているGeranomyia属既知種で翅に斑点模様がないのは本種のみです」との御答えであった。

 北隆館の圖鑑に拠れば、このGeranomyia属に属すヒメガガンボは「口吻が鳥のクチバシ状に突出している」そうである。


Geranomyia gifuensis 5


横から見たGeranomyia gifuensisの顔

「宇宙人的」と表現する人もいる

(写真クリックで拡大表示)

(2010/11/02)

 御話に拠れば「本州で記録されているGeranomyia属既知種で翅に斑点模様がないのは本種のみです」なのだから、殆ど決まったも同然の様な気がするが、大師様は「・・・に一票」としか書かれていない。

 これは、ガガンボ類(ガガンボ科とその近縁科)の研究が圧倒的に不足している(研究者が少ない)ことに起因している思われる。「一寸のハエにも五分の大和魂・改」での情報に拠ると、ガガンボ科の代表的な属の一つであるTipula属では、日本で記録されている種は約100種だが、実際には400種以上が生息するとのこと。この様な事情はTipula属に限らず、ガガンボ類全体に通じると思われる。既知種よりも、未記載種や日本未記録種の方がずっと多いのである


Geranomyia gifuensis 6


口吻は形や太さが部分により異なり、かなり複雑な構造をしている

途中左側に飛び出しているのは小腮鬚と思われる

(写真クリックで拡大表示)

(2010/11/02)

 ヒメガガンボ科(Limoniidae)は九大目録ではヒメガガンボ亜科(Limoniinae)に入っているが(ガガンボ類の上位分類には議論が絶えない様である.近縁の科として上に挙げた数科を全てガガンボ科に含める研究者もおり、九大ではそれを採用している)、亜種も含めて488もの記録が出て来る。

 また、Geranomyia属(九大目録ではLimonia属の亜属として扱われている)には、7種8亜種が記録されている。この属(亜属)がどの程度研究されているのかは分からないが、Tipula属と同じ程度とすれば、他に20種位は未記載種や日本未記録種が居る可能性がある。単純に、Geranomyia gifuensisと決めつける訳には行かないのである。


Geranomyia gifuensis 7


オマケの1枚.右後肢が無いのが目立つ

(写真クリックで拡大表示)

(2010/11/02)

 ・・・と云う訳で、今日の虫はヒメガガンボ科(Limoniidae)ヒメガガンボ亜科(Limoniinae)の「Geranomyia gifuensis?」と、「?」を付けて置くことにした。尚、Geranomyiaを亜属とした場合の学名は、Limonia (Geranomyia) gifuensisとなる。







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最終更新日  2010.11.15 15:31:12
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