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テーマ:日々自然観察(10123)
カテゴリ:昆虫(甲虫)
体長は13mm強、良く見てみると、サビキコリ(Agrypnus binodulus)の様である。コメツキムシ科(Elateridae)は九州大学の日本産昆虫目録に拠ると651種も記録されている大きなグループだが、今日のコメツキムシの様な胸背や鞘翅に光沢がないのは、サビキコリ亜科(Pyrophorinae;九大目録ではPyrophotinaeとなっているが、これはmisspelling)サビキコリ族(Agrypnini)と思ってマズ間違いないので、検索は容易である。
サビキコリ族には、前胸腹板に触角を収める深い溝がある。上の写真で、眼の下から後方に伸びている黒~赤の凹みがそれである。サビキコリ族から属への検索表を辿ると、「中胸後側板は中基節溝に達する→4mm以上→小楯板は単純で隆起線を欠く」で、サビキコリ属(Agrypnus)に落ちる。 サビキコリ属は、九大目録を見ると33種も載っているが、その多くは南方系で、東京都本土部昆虫目録を見ると6種しか記録されていない。この6種の内、ハマベオオヒメサビキコリを除いた5種は保育社の甲虫図鑑に記載があり、体長が10mmを越えるのは、サビキコリ、ムナビロサビキコリ、ホソサビキコリの3種だけである。
この3種の区別は外見から容易で、サビキコリは全体にゴツく、学名の種名(binodulus)に示される様に、胸背に突起状の隆起が2個(1対)ある。これに対し、ホソサビキコリは全体的に細長く胸背は平滑、ムナビロでは胸背が僅かに隆起するが、サビキコリとは異なり前胸背板は前方にかなり拡がる。 これらから、今日のコメツキムシはサビキコリであるとして問題無いであろう。また、サビキコリは成虫越冬することが知られており、今頃出現しても些かもおかしくない。
尚、ハマベオオヒメサビキコリに付いては良く分からないが、京都府のレッドデータブックに「要注目種」として載っており、「体長7.5~12.5mm.扁平幅広、黒褐色で触角と脚部は多少とも赤褐色で、前胸背後角又は全身が希に赤褐色の個体もある.ヒメサビキコリ( A. scrofa(Candeze))に体長・体色・外形共に良く似ているが、下翅が常に退化縮小している」、「主として外洋性海浜地区に生息し、分布も局所的である」、「これまでの記録では4~8月に亘って採集されている」とのことなので、今日のコメツキムシである可能性はないであろう。
このコメツキムシ君、玄関のスレートの上に居たのだが、スレートではストロボの反射があるので撮影は無理、何処で撮影したらよいものか? 土の上に移して少し撮ってみたが、土の上では横からや前から撮る時にかなり無理な姿勢を強いられる。其処で、径10cm位の石の上に載せて撮影することにした。 コメツキムシだから仰向けにしておくとやがてモソモソ動き出し、パチンと撥ね跳ぶ。しかし、普通に腹ばいにして置いたら、何時まで経っても動き出さない。所謂「死んだ真似」の様だが、表では寒いのかも知れない。そこで石ごと暖かい部屋の中に入れて撮ることにした。
待つこと暫し、やがて脚を伸ばし始めたので、急いで撮影したのが今日の写真。最後の頭部の写真を撮った後は、コソコソと歩き始めた。結構速い。径10cmの石では直ぐに縁に達して、下に降りてしまう。冷蔵庫で冷やして動きを止める手もあるが、既に一通り写真を撮った後なので、撮影は終わりにして、庭に逃がしてやることにした。土の上に置いたら、もう「死んだ真似」はせず、極く普通に歩いて行った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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