カテゴリ:芯のある女
今年もやってきましたジブリ系の夏休み映画です。
スタジオジブリから独立し、新しいスタジオ「スタジオポノック」を立ち上げた米林宏昌監督の 作品です。 最近のジブリ系映画は、ちょっと昔の英米児童文学からテーマを拾ってくることが多いようですね。原作は英国児童文学作家メアリー・スチュアートの『The Little Broomstick』(1971年出版)、日本語翻訳版『小さな魔法のほうき(1971年出版)』。 この映画では、日本を舞台にリメイクするわけでなく、あくまで原作の舞台設定をベースに仕立てています。 主人公メアリは、片田舎に住むシャーロット大叔母さんの家に引っ越してきました。両親は仕事で忙しく同行できず、ひとり先にやってきました。 大叔母さんの家には素敵な庭があり、メイドと庭師を雇っている立派な家のようです。大叔母さんは、質素な出で立ちでメアリを出迎えます。落ち着いていて包容力があり、メアリは到着初日からすっかりくつろいでいるようです。 映画の始まりは、赤い髪の少女が、炎燃えさかり不思議な魚の妖怪のようなものから必死に逃げていくシーンから始まりました。 そのため、一転して大叔母さんの家の場面では、眠くなってしまうくらい時間がゆったり流れています。 メアリは田舎の時間を持て余し、庭にでて、庭師の仕事のじゃまをしたり、飼い猫の誘いに乗り森に入って、美しい花を摘んだりしています。 が、その美しい花がすぐに大問題に発展するのです。 猫の道案内に従い、森の中から、魔女の島へほうきにまたがって飛んでいき物語は急展開を示します。 それきり大叔母さんの話はおしまいかと思いきや・・ 鏡越しに現れ、美しい花の由来を告白し始めるのです。 大叔母さんが、なんと映画出だしの赤毛の魔女の少女本人であったことを。勇敢にも気が狂った魔法学校長から秘宝を持ち去り逃げてきたあの少女が、優雅に平穏に慎ましく暮らしている大叔母さんとは! ギャップがありすぎます。 そして勇敢さのかけらが当初のシーンからはみじんも感じられなかったことに違和感を覚えてしまいます。 が、大事件を経験した子どもというのは、案外何でもない普通の暮らしを望むものなのかもしれません。魔女から足を洗ったらしい大叔母さんは、どんな仕事をしていたのか、どうして大きな家で暮らしているのか、メイド付きの暮らしなのだから、お金持ちそうではあるがなんの説明もなく、いったい全体、どのように大人になって、年を重ねたのか映画からはしる由もありません。 しかし、勇気を振り絞って、間違った道から方向転換する。そして安定した平和な生活を目指す。それを叶える。 ということは、これまた案外できるようで達成しがたいものなのかもしれません。 大叔母さんが心の奥にしまい込んでいた魔女の心を、親戚の女の子の生還のために解き放つなんて、心温まる話じゃありませんか。 現に、それがきっかけで、メアリは人間界に戻ってくることができたのですから。親戚の子どもの未来を見殺しにすることなく、しっかり取り戻す。 後からやってくるという、メアリの両親もそんな事件が我が子に降りかかっていようとは思ってもみないであろうし、知ることもないでしょう。大叔母さんは、ただ笑顔で両親を出迎えることでしょう。 「メアリは元気に過ごしていましたよ」と。 大人が子どもを見守る社会。現代では失われつつあることかもしれません。 あなたのすぐそばにも、メアリの大叔母さんのような人はいませんか。 そして、メアリの大叔母さんのような人でありえますか。 自問自答してしまいます。 おいしいお茶、ただただ流れる穏やかな時間、美しい庭、かわいらしい飼い猫、お手伝いさんや庭師に友好に応対する、気にかける。近所の元気な少年の好物のジャムを作り渡す。 田舎の暮らしはのんびしていているようにみえて、やっていることは都会の人より忙しいかもしれません。特におつきあい面においては特に。 観客のひとりとしては、大叔母さんの魔法学校時代の姿をもっと見たかった、どんな少女だったのだろうと想像するばかりです。 <役柄とその声優> 大叔母さん・・満島ひかり 成長した魔女の少女(赤毛の魔女)・・大竹しのぶ <全体観> お子様向けの映画のようですが、まさしくお子様向けに作りすぎていて、お子様も感動しがたい映画に仕上がっていました。私は上映後に、映画を見終わった観客の表情を必ず見るのですが、おおかたのお客様の表情は同じでありました。 次回作に乞うご期待です。 【中古】 メアリと魔女の花 新訳 角川文庫/メアリー・スチュアート(著者),越前敏弥(訳者),中田有紀(訳者) 【中古】afb 《即納》メアリと魔女の花 ミニタオル ティブとギブ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017年09月11日 20時07分40秒
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