移転先さがし
このところ、きずな出版の移転先のビルをさがして、大分見て歩いた。すでに私はこれまで、40回近く移転している。いや、もっと多いかもしれない。もっともこれはプライベートとビジネス両方を加えての回数だが。それにしても、ふつうの人では考えられない多さだろう。そのことは私の運命係数でわかっているのだが、結構楽しんでいる節もある。今回は、すでに決めるところまで来ているが、新しいビルや部屋で生活するたびに、新しい人生が始まるようで、ドキドキする。私の人生は大学卒業までが下降運だった。2、3年で引っ越すたびに、家が小さく狭くなり、生まれた家の記憶もうっすらとしかない。「週刊文春」で「家の履歴書」という連載が長くつづいているが、毎号の筆者が子どもの頃の家を正確に記憶しているのが、うらやましくてならない。それでも社会人になってからは、上昇運に恵まれたことで、移転は楽しいものになっていった。今回も、きずな出版とその関連事業が、ちょっぴり発展していく見通しが立ったので、新しい移転先をさがし出したのだが、とても勉強になる。遠くから見聞きしているときには、すてきな環境だと思っていたのに、直接行ってみるとそうでもなかったり。それでも改めて知ったのは、どの場所に行っても、生活している人がいる、ということだった。「ここは住みにくいな」と私が勝手に思っても、そこにも人は住んでいる。逆に「こんな高級地に若い人が1人で住んでいるのか」と思うこともある。人はどこにでも住めるものであり、どこに住んでも満足できないのだろう。少しでも満足できるように、這い上がっていこうか。