私は敗戦直後の両駅を見た
東京駅が開業百周年だという。その間、戦災を受けて潰滅状態になったことがあるが、新しく建て直したいまの東京駅は、世界の大都市の駅舎と比べても見劣りしない。いや世界一かもしれない。私はこの東京駅が戦災を受けて、オンボロ駅舎になった当時を知っている。空襲でドームが焼け落ち、鉄骨の間から空がまる見えになっていた。いまから約70年前のことだが、そのときはもう東京駅の復興など、専門家以外は誰も考えていなかったろう。それほどひどくやられてしまった。これに対して、新宿駅は戦後すごい勢いで発展したものだった。もちろん大空襲によって大きな被害を受けたが、この辺は地盤が強いため、関東大震災でも助かったくらいの土地なのだ。敗戦の翌日からいまの西口広場に闇市が立ち並び、金さえあれば何でも手に入る有様だった。私は高校生の頃この闇市をさまよい、食べものを手に入れたが、恐らくそんな経験をもっている人は、もうほとんどいないだろう。この新宿駅が、東京駅より歴史がはるかに古いことを知る人は少ないに違いない。新宿は、来年2015年が開駅130周年となる。あの闇市時代を思うと、いまの近代的副都心になったのが、信じられないくらいだ。1つ面白い話をすれば敗戦後の警察は、新宿と六本木の街をやくざ、暴力団に頼って復興したのだ。その後世間が落ち着ついてきたので、暴力団追放に踏み切ったが、これで彼らが怒ってしまった。いまでもこの2つの繁華街が、警察の手に負えないのは、こういう事情があるからなのだ。