いかに力を引き出すか
このところ、さまざまな分野で、優秀な指導者、監督が出始めた。日本シリーズを戦っているソフトバンクホークスの工藤公康は、監督1年目でありながら、早くも名監督と呼ばれはじめている。ベトナムのサッカー代表チームを昨年から2年連続の契約で率いている三浦俊也監督は、早くも実績を挙げて、この弱小チームをアジアのホープに引き上げた。三浦はベトナム人の性格を見抜いて、レベルを上げたのだが、この男は選手より指導者の器であるようだ。「吹奏楽界のカリスマ」と呼ばれているのは、福岡県の名門、精華女子高を率いて全日本に19回出場、金賞10回獲得という、信じられないような成績を残した藤重佳久さんだ。この藤重さんが定年で活水女子大の教授になったのは今年3月だった。それから付属の活水中学・高校吹奏楽部を指導するや、まったくの無名校を、早くもこの11月の全国大会に出場させてしまったのだ。彼は「しっかりほめてしっかり叱る」をモットーに指導してきているが、生徒たちから「よっくん」と呼ばれているという。ただ単にこわい先生ではないのだ。日頃から「笑顔は心のビタミン」といって、部員を励ましている名指導者といえるだろう。この世の中には、自分の実力がなくて指導者になった人はいない。名指導者と呼ばれる人たちは、必ず現役のとき優秀な成績を残している。しかし現役でよくできたからといって、よき指導者になれるとはいえない。ここが重要なのだ。いまのプロ野球、セパ両球団では、かつての西武ライオンズの選手の中から、4名が現在、各球団の監督になっているという。つまり、かつての西武の名監督によって指導されたことで、選手も名指導者になれたのだろう。その西武の名監督とは広岡達朗と森祗晶の2人だ。工藤公康もこの2人にしごかれたことで、指導者としての才能が芽生えたのだろう。どの分野でも、よき指導者の下につくことが、のちのちの人生に大きくかかわることを知っておくべきだろう。