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うちの社員にならないかという方針を打ち出された翌日の約束の朝にはなにも声がかからなかった。
ということはもう雲行きは怪しくなっているとみていた。 正社員として登用されることを節に願っていたわけではないが、一旦色気を見せられてやっぱりダメでしたということになると、オレもひとのこだしちょっと落ち込む。 冷やかしでいったつもりの採用面接でたまたま二次面接までいって、その挙句に断わられたようなときにもちょっと落ち込む。書類面接ではねられたときも同様である。 数打ちゃ当たる、と思っていても、打った全てが当たるに越したことはなく、外れたらそれはもう全人格を否定されたような気持ちに一時的になる。 夕方、帰る段になってようやく声がかかった。 またしても密閉された会議室でリーダーとの会談が設けられた。 会社という組織はことごとくピラミッド型の階層構造になっており、現場のリーダー→その上司→部門長→事業部長・・というように果てしない階段があり、その一つ一つに承認をもらわないと話が先に進まない。ということをまず説明された。 話がながくなりそうだから要約すると、現場のリーダーは部門長からこう正論をいわれたそうであった。 「いくらひきとめたいからといっていちいち社員にしてたのでは組織はなりたたない」 正論であろう。 ほらみたことか。「成功率100%を明日の朝に保証する」といったのはなんだあれは口先だけか。目前の危機を免れるための方便か。 「じゃ離職時期についての調整が始められるわけですね。まず引継ぎの人を定めてください。2人必要です。2人分の仕事をしてましたから。あと引継ぎ以外の私の仕事は全てキャンセルしてください。」 とはオレもいわない。 なんだかかわいそうになってきたのである。 室井さんの気持ちを理解できるようになってきた青島のような心境である。 たしかにオレは現場からは必要とされるのであろう。 でも「組織」からは必要とはされないのである。 「事件は会議室で起きてるんじゃない!」というあの有名なセリフを、今まさにいいたくて仕方なくなってきていいた。 そしてそんな大走査線とは無関係に、オレの腹はこの時点でだいたい定まったといっていい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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