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今働いている現場の正社員になる道が完全に閉ざされたというわけではないらしい。
裏口からひょっこり入るのは段階的な承認を得る必要があり、そのためのコネがいくつか足りないらしい。 そうかそうか、それは仕方がない。 また、オレはあいにく5ヶ国語も話せないし経理や会計に精通しているといった特技も持ち合わせていないため、書類上で人事部へのアピール度がないこともマイナス要因なのだそうだ。経営は確かに、自社を世界に羽ばたかせたり国内での信用を高めてトップシェアに躍り出たりしたいのだろう。 ああそうですか、というしかない。 「それでもうちにチャレンジする気があるなら」 と前置かれて、次のような提案をされた。 「人事宛の推薦状は書くし、キャリアプランとかロードマップとか、人事受けする情報は伝えるから、正攻法で面接を受けて、段階を踏んで、一緒に仕事をやってゆける方法を考えていきたい。今所属しているところから籍を抜いてダミーの会社に入るとか、一旦子会社に入ってそこで実績を作るところからスタートすればスムーズに話は進むかもしれないとか色々方法はある。組織の一員として評価システムに組み込まれるとか貢献を求められるとか、自覚を持ってもらう必要はあると思う。まずその前に、中村さんの気持ちを聞いておきたい。うちの会社に入りたいかどうかを。」 オレはこう答えた。 「正直に申し上げると、入りたいかどうかはよくわからない。 それに問題がすりかえられているような気もする。私を受けれる道があり条件を提示されるなら、失礼ながら先方とこことを秤にかけられる優位性が生じるからお待ち申し上げた。入社の意欲を問われるのは筋違いである。 ただ、そのようにしてひきとめていただいたという誠意と厚情は十分に伝わった。 今週末には先方にはなんらかの意思表示をするつもりであり、その前にあらためて話し合いたい。」 やがてその週末が訪れた。 背広を着て会談に現れた現場管理責任者はこういった。 「八方手をつくしたが、やはり正攻法で中途採用のための手続きを踏んでもらうしか、現時点では手がなさそうだということがわかった。つまり我々は、中村さんを引き止めることができなくなってしまった。この短期間ではここまでの調整が限界という期間的な問題でもあるかもしれない。繰り返し申し上げるが、子会社に移籍してもらってからなら話は進めやすい・・・」 「あの、しゃべってもいいですか?」 と現場責任者の話を中断させオレは次のように話し始めた。 「まずこのたびはお騒がせしたことをお詫び申し上げる。次に正社員化への道を模索していただいたことに対しては、結果がどうあれ少なからず働きを認めてもらった証として受けとめた。感謝する。 そして今後の展開についてだが、当初7月中旬として調整しようとしていた私の離職時期を9月末に延期する。そうすると、案件ベースでアサインしようとした先方の期待を裏切ることになり、採用そのものが白紙化する恐れが生ずる。無職になる事態は避けたいから、最悪の場合、10月以降も私の身柄をひきとってもらえるだろうか。」 「それは保証する。当プロジェクトは今後4年は存続する。途中の解除は考えていない。」 「ならば離職時期調整の結果、9月末になったと先方には告げる。あとは白紙でよい。」 「先方が9月末でもよいといったら、移るということか。」 「そういうことになるかもしれない。しかし10月から発生する案件が私の求めているものではないという可能性は考えられる。選択肢は多いほどよいし、転職の自由が失われたわけではないから、他の道を探ることもあるかもしれない。」 というようなことで騒動はひとまず円満(といえるのかどうか知らないが)におさまった。 このことを先方に告げると、10月就労開始まで待つという快い返事をもらった。 決断は先送りにされたわけであった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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