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「チームバチスタの栄光」という本を借りて読んだ。
心臓外科手術中に不審死が相次ぎ、窓際医師がその調査にかりだされ謎を解いていくという医療ミステリーだった。最初はどうかと思ったけど、後半、主役級のキャラが出てきてからは結構面白くなってきてだいぶ満足した。 医療ミステリーの本筋とは別にこの小説の根底には、病院という組織のうにょうにょしたところが、たとえば部署同士の権力闘争や人間関係の複雑さでもって描かれており、むしろそのことを書くためにこの作家は筆をとったんじゃないかというようなことが、文庫の最後の解説でも言われており、たしかにミステリー本体よりも病院の中味をのぞき見るような視点での面白さに読み手もひきこまれてるんじゃないだろうか。 そこで描かれたり語られたりしているテーマはオレの思うところ、 医療の目的は患者を救うことではなく、医療組織を運営することにあり、患者を救うのはそのための手段にすぎない。 ということではないかと思われる。 この小説の主人公は、手術中に起きた不審死の調査として、同組織内の仲間にたいして内部調査を行う役割を任じられる。疑いをもって聞き取り調査を行うということは、それだけで疎ましがられることになるし、調査には法的な強制力はないから、取り調べられるほうは話して不利益になるようなことは話そうとはしない。 疑われるようなことをしていないにもかかわらず不利益になることを厭うのは、組織内での自分の立場を悪くしないための予防線であったり、よしんば誰かを貶めたいためのちょっとしたはかりごとであったりする。 組織とは、このように個々の思惑が複雑に積み重なった挙句に出来上がったものであり、けして「組織とは」というような定義や法則に従ったものではない。組織は一枚岩ではなく、だから一筋縄ではいかない。というようなことを浮き彫りにしている小説でもある。 病院に限らず、事件や恋愛を通して色々な組織の実情を暴く娯楽作品は昔からあって、有名なのでは白い巨塔とか野生の証明とか踊る大走査線とか、あとたぶん坂の上の雲も組織の理不尽や難しさを描いた小説だと思う。 組織とはかくもゆがんでおるのかという類の話はいくつも浮き彫りにされてきた でもこれだけ浮き彫りにされているのにもかかわらず、組織と個人との戦いを描く話の種が尽きないということは、組織の体質は変わっておらず、これからもずっと変わらないのだろうとは思われる。 恥ずかしながらオレも最近ようやくこのことにうすうす気付きはじめていたけれども、にわかには信じがたくを受け入れることができずにいる。 医者の使命が患者を救うことならば、政治家は国を治め、人の暮らしをよくすることが使命あり、建築家は建築で、芸術家は芸術で、人を豊かにしたり幸せにしたりすることが目的であらねばならない。 組織運営の糧に甘んじてその対価で生計を成すことを果たして目的としていいのだろうか!1 というところを強く言いたいのはやまやまだけれども、まずは生活するために仕事をしているわけで、オレも偉そうなことは言える身分ではない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011.07.03 19:48:18
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