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今は昔の15年ほど前の冬。奥秩父の山に単独で登りに行った時のこと。
その日はこんこんと雪の降る夜で、テント設営も大変だったので、冬の間は開放されているF小屋に宿泊させていただきました。 小屋の中には誰もおらず降り積もる雪が寂しさを醸し出しています。 そうです。 この小屋で昔、単独で登山中の女性が小屋番の男に暴行殺害された事件がありました。 そしてその日はまさに事件が起こった日からちょうど10年目にあたる日だったのです。 冬の夜は早くあっという間に周辺は真っ暗。外に出て、降り積もった雪の上を歩くと「きゅっきゅっ」と乾いた音がたちます。獣の足音もあらわに響く小屋の中で一人シュラフにもぐりこみ寝ようとしたその時、 「がさっ」 と音がしました。気のせいかもしれないと思いこんで再び眠りに入ろうとすると 「がさっ」とあきらかに何者かが床の上をはいずり回る音がします。 その音は次第に遠くからまた近くへと移動し、あきらかに意図的な動きをしています。 恐怖が全身をつらぬきます。 目をあけるとそこには今にも、髪を振り乱した血だらけの女性の顔がありそうで目を開けたら終わりだと自分に言い聞かせ、必至で眠りにつこうと努力しました。 そうこうしているうちに僕はいつしか眠りについて、気がつくと小屋の外には快晴の青空の下で新雪が照り輝いていました。 無事に朝がきたのです。 今にして思えば、あの音はネズミか何かだったろうと思うのですが、別の知り合いはこの小屋で、冬のある日にひとりで泊まっていて、小屋の外を歩く正体不明の足音に悩まされたとのことです。 山は自然のかたまりですから、人智の及ばない現象の一つやふたつ残っているかもしれませんね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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