ところでこのサバンはあることで有名だ。
あることとはフィリピンでは数少ない世界遺産のひとつへのゲートシティということだ。
その世界遺産とは「プエルトプリンセサ地下河川国立公園」
読んで字のごとく地下に川が流れているところ。つまり洞窟内河川のことである。
今回の旅の目的はクレオパトラニードルであったのだが、全然足取りつかめないし、せっかくここまできたのだから、その地下河川なんとやらの世界遺産を拝んでいくことにした。
行き方がいまいちわからんのでホテルでガイドを頼んだ。ガイド、保険、交通費、昼食込みで1500ペソほど。
高い・・・
ガイドとともに、港まで歩き、そこからバンカーボートで15分。
思ったより観光客が多くてボートの順番待ちも長い。
ボートで川の入り江に着き、そこからすぐに所に洞窟への入り口があった。
地下河川なので、足はボートである。
洞内は真っ暗なので、ボートの舳先にはバッテリーに接続した裸ランプが設置されている。
ボートはかちかち山の泥舟のように今にも沈みそうなチープな手漕ぎ船で、世界遺産と呼ぶにはチープなインフラであるがが、まあアジアらしいといえばそう。
さて肝心の洞内であるが、全長8キロ超の洞内はさすがにスケールはでかい。
明かりを照らされた洞壁には無数のコウモリが飛び交い、秘境チックではある。
だが観光客が入れるのは1.5キロ先まで。
その先には急に天井を低く落とした、河川が悠々と続いていた。
この洞窟が魅力あるのはむしろそこから先だろう。
ここまでであるのならば、それは遊園地のアトラクションの域を出ない。
このレベルの洞窟ならば日本にもある。
このレベルの秘境気分を味わいたいのなら、日本と言わず東京にだってある。
だからやっぱり、僕的には「ああこんなもんか」という感想を抱いただけで、「世界遺産」と「観光」の利的な因果関係に少々むなしい気分になるのであった。
ともあれ、観光は終わり。
さあ昨日来たばかりだというのにもう午後には帰り支度である。
あれ俺ってば何しにきたんだっけ?
世界遺産からの帰りがけ、ふと考える僕のそばでガイドが言った。
「サー、山の方をみてごらん」
そこにはジャングルの奥地に石灰岩の岩がそそり立っていた。
「サー、あの山や、人の顔みたいだろ、あのとんがった山なんてほら、クレオパトラの鼻みたいにスティープだろ」
その瞬間気がついたのである!
僕が探し求めていた「クレオパトラニードル山」はあの山脈の総称なのではないかと・・・・
「あの山に登るのはどれくらい大変なんだい?」
「麓はジャングルだからね。4日くらいかかるよ」
やや興奮気味に尋ねる僕に、ガイドは、何を興奮しているんだと言う感じの語調で静かに答えた。
「そうかジャングルをたどって頂上まで4日か」
するともしかしてあの鼻のてっぺんにいたる岩壁は未踏かもしれないな。
あの山に登る機会がこの先にあるかどうかはわからないが、昔から疑問を抱いていた「クレオパトラニードル」の謎の片鱗をみれた僕は満足であったし、そして地球上にはまだまだネットにもひっかからない秘境がいくつもあるんだなあと思うとそのことに少々安心と興奮を感じたりするのであった。
そんな思いを抱きつつ、今回は帰国。
あとはサバンからプエルトプリンセサ、マニラ、東京、自宅までの長い道のりを残すだけである。