相撲部屋の心温まる話
もう20年も前になりますが(2002年頃)、間垣部屋にパソコンで後援会データを入力する仕事で通っていたことがあります。そこで垣間見た温かい話をご紹介します。当時、間垣部屋の親方は、元横綱二代目若乃花さんでした。大相撲開催の前になると相撲部屋には大量の「番付表」が届き、それを折って封入し後援会の方々に発送する作業があります。東京場所の場合は、部屋の若い力士たちが封入作業をしていましたが、地方場所になると力士たちは地方に行ってしまうので、女将さん一人で作業していました。ある地方場所の前、女将さんが一人で封入作業をしているところに、配達の若者がやって来ました。彼は以前、間垣部屋にいた人で、辞めて近くの店に勤めていたのです。相撲部屋に入ってもみな関取になれるわけではなく、辞めていく人も多いと言います。女将さんが一人で番付表を封入している姿を見て、彼は手伝うと言います。配達の途中だからと女将さんは断りましたが、「店の親方から手伝うよう言われたから」と言って、封入作業を手伝っていました。優しいなぁと思いました。そして、封入作業を終えて帰った後に「配達に行って帰ってこない」と、彼の親方から電話がありました。女将さんに嘘をついてまで手伝ってくれたことを知り、その優しい気持ちに感動しました。女将さんと若者がお互いの気持ちを思いやる光景に、温かい気持ちになりました。力士の中には、中学を卒業してすぐ親元を離れ、相撲部屋に入る若者が多くいます。そんな中、相撲部屋の女将さんは「お母さん」のような存在なんだろうと思います。その強い絆を感じました。最近、元横綱白鵬さんが引退し、「間垣」親方を襲名するニュースを見て、遠い昔の「間垣部屋」の出来事を懐かしく思い出しました。