堅山南風「大震災実写図巻」
今年は関東大震災から100年にあたる年で、震災関連の作品展示が多く見られます。その中でも是非観てみたいと思ったのが、堅山南風作の「大震災実写図巻」です。巣鴨の自宅で被災した南風は、上野や浅草など様々な場所を訪れ、震災の惨状や復興に向かう様子を31枚の絵に描きとめました。地割れ、列車の脱線、浅草にあった凌雲閣の塔が折れている光景、上野の西郷さんの銅像に安否を告げる貼り紙の山、とても悲惨な光景だけれど優しいタッチで描かれていることが印象的でした。そして最後は、慈悲深い観世音菩薩の絵で締めくくり、人々への救いの願いを感じました。これら31枚の絵は、発生直後の様子が描かれた「上巻」、そして避難生活や復興の様子を「中巻」「下巻」と、3巻にまとめた絵巻として展示していました。全部の絵を広げて展示することはできないので、一部の絵しか見ることはできませんでしたが、どれも心打たれるものでした。私は堅山南風という画家を知りませんでしたが、横山大観の弟子だったそうです。折しも、震災当日9月1日は、横山大観の水墨絵巻「生々流転」が展覧会で公開される初日でした。余談ですが、今年の春に東京国立近代美術館で開催された「重要文化財の秘密展」では、全長40mにもおよぶ水墨絵巻「生々流転」が全部開いて展示されていました。ぜひ、堅山南風の「大震災実写図巻」3巻も全巻開いて鑑賞したいものだと思った次第です。この作品は、半蔵門ミュージアムで11月5日(日)まで展示しています。興味のある方は、ぜひご鑑賞ください。●半蔵門ミュージアム https://www.hanzomonmuseum.jp/