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これから始まるであろう猛暑と節電の波に飲み込まれることの無いよう、
我が家に扇風機先生をお招きした。 真っ白な肌をした先生はどこか女々しい。 どこもかしこも丸っこくて安全だ。 昔自宅にあったはずだが、しかしいつの間にか無くなっていた、 緑の羽根にクリーム色の体をした、どこもかしこも角ばって師匠然とした扇風機先生とはえらく違う。 「そんな、なよなよとしたヤツに頼っていいのか」 部屋の上部に取り付けたクーラーから怨嗟の声が聞こえる。 ハッと見上げると、真一文字に口を閉じて知らん顔をしていた。 ともあれ、折角お越しいただいたのだから、働いて貰わねばならぬ。 タダ飯を食わせるような余裕は無いのだ。 見れば、この先生は「リズム」が取れるそうだ。 どんなものかと拝聴してみると、時々強い風を煽ったり、時には静かな風を送ったり。 なるほど、リズムか。 しかし、なんだかあんまり強い風は来ず、たいてい弱い風。 「こいつ、サボってんじゃないだろうな?」 と後ろを振り向いたときにだけ、これ見よがしに強い風を吹かせる。 なかなかしたたかな奴だ。 ともあれ、この夏はこいつと、 あと丈夫で不貞腐れているクーラーにも時々は頑張ってもらいながら、 なんとか乗り切っていこう。 定番ではあるが、扇風機先生の顔に「あああ」と声を掛けてみたら、 ちゃんと面白声に変換してくれた。 一番重要な機能だから、一安心である。 野間 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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