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カテゴリ:やま
それは寝ようとした夜中一時過ぎ。 「ドンドンドン。」 なにやら、音がする。 ドアを叩く音。 音 といっても、僕の家ではなく、隣のマンションの方から聞こえる音。 窓を開け、夜風を入れている山田家に不穏な音まで入ってきた。 妹はカーテン越しに見えぬ隣のマンションを窺がう。 息を潜め耳を傾ける僕。 「どんどんどん。 ……。 ……。 たっちゃーん。」 酔っぱらったような男の声。 さては、おいたをして奥さんに占め出されたか。 「たっちゃーん。」 いや、その甘えるような声に 彼女の家に来たやつ なんじゃないかと予想を立てる妹。 それにしても、長い間、しかも大きな音で っ叩き、 呼ぶ。 許して家に入れてあげればいいのに。 まさか聞こえないわけはないだろう。 それかこの音、近隣の人に警察を呼ばれるんじゃないか。 ちょうど水島のヨシくんとSkypeで話そうとしていたから ちょうどいい、 「ヨシくん…聞こえる?」 事情を話すよりも 「どんどんどん たっちゃん たつひこくーん」 skypeはすごい、ヨシくんもすぐに事態を呑み込めたようだ。 いやまて たつひこ? たっちゃんって男? 息子? 別れた女房のところにいる息子? 夜中に会いたくなって? 会ってはいけないと弁護士から言われているのに? どんどん膨らむ想像。 ヨシくんと話していて外の様子を見ていなかった僕らに 隣の妹の部屋で張り込んでいた妹から報告が入った。 「男は、じいさん。 白髪の、じいさん。 帰る後姿を確認。 アメリカ人のような身振りで 肩を竦め 両方の手のひらを上にあげながら帰っていった。」 と。 安心してヨシくんと話していると、30分も立たないうちにそのじいが。 おいおいまたかよ。 ぼくらもお手上げジェスチャー。 あまり気にも留めず、ヨシくんと会話をしていたら ……。 ドアを叩く音がしない。 妹の報告もない。 どうなったのだろう。 妹は張り込みをしたまま、眠りについたのだろう。 じいは じいは じいさんは、無事たつひこくんのもとへいけたのだろうか? 気になる。 気になるーー。 どうなったのかドアを叩きに行こうかな。 ヤマ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011年07月17日 02時31分22秒
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