パン。
知り合いの関西出身の人が駆け込んできた。「ヤマさん、食パン4枚切りってありますよね?」開口一番に何を言い出したかと思ったら食パン一斤のカット数のことらしい。六枚切りか八枚切りしか知らない僕は、「知らない。それ普通の食パンじゃないんじゃない?」と、答えるとその子は激昂して「なんでヤマさんまで私を変人扱いするんですか! 絶対関西では4枚切りはありますって。 おかんに6枚切り買って帰ったらよう怒られましたもん。『なんやこんなうっすいもんこーてきて、食べた気せんわ。』 ゆうて怒られましたもん。」怒涛のようにしゃべるその子に「ホント?それ君んち特別なパン買ってたんじゃない?」と信じていない発言をするとなんなんすか、なんなんすかとブツブツ言いながら、携帯をいじりだし、電話をかけだした。「もしもし。今大丈夫? あんな、変なこと聞くんやけどな、食パンって何枚切りがあったけ? …いや、何枚切りかって… …… そうやんな!4枚!5枚!6枚! やーっぱそうやんなー。こっちの人がうちのいうこと信じてくれんでな 変人扱いするんやで。いやいややっぱそうやんな。ありがとう。 それだけなんやけど、助かったわ、ほんじゃまたねー。」その子は勝ち誇った顔で「ほら、うちの友達もあるってゆーてますもん。 4枚!5枚!6枚!」というが、電話までして確認したんだから本当なんだろうけど4,5,6ってなんでそんな刻んだんだろう。それなら4,6,8にすればよかったような。1ずつの刻みのこだわりが関西人のこだわりなのだろうか。電話までされて事実を突き付けられ押し黙った関東人に勝ち誇った関西人は気分がよさそうだった。そして僕に「ほんじゃ、ヤマさんは6枚ぎりと8枚切りどっちが好きなんですか?」と聞いてきた。だから僕はこう答えた。「パン好きじゃないから。」すべての会話を終わらせる発言をしてしまった。それからみんな何事もなかったように去って行った。ヤマ