未来からの使者
...宇宙服だ。宇宙服を着た人がこちらに歩いてくる。 流行っているのだろうか。ゴルファーが被るキャップのつばを更に長くしたような帽子を身につけておられるご婦人方をよく見かける。そのつばは可動式で、顔を覆うように眼前に下ろして装着するのがデフォルトらしい。そして大抵がメタリックな光沢を放っている。上下真っ白のジャージに合わせられると、遠目からは宇宙服にしか見えない。折しも見かけた時期が新型インフルエンザが世間を騒がし始めた矢先であったから、あるいは対ウイルス用に開発された防護服かと思ったほどだ。 恐らくは紫外線対策なのだろうけど、見慣れないからちょっと驚く。あれは高校生の頃だったか、あるいは大学に入っていたか、エッジの効いた、面が段になっていないタイプのマスクを初めて見たときも、同じ様に驚愕したものだ。 「キン肉マンのマスク!」と。正確には、キン肉マンはあの独特の顔自体がマスクである訳だから、二重のマスクという不思議な状態になるのだけれど、今回そこに言及するのはやめておこう。最近はそんなマスク達も見慣れたもので、逆に「切り餅」タイプ(長方形に紐をつけただけのような)のマスクを見ると、「おっ、まだ現役かい」なんて思ってしまう。高機能マスクが一般的に普及したように、あの宇宙キャップ(名称不明)も、紫外線を気にしだす夏に向けてさらに流行りだすことだろう。 来年頃には、総宇宙キャップ時代が訪れるかもしれない。外を歩くだけで、宇宙を旅するようなものだ。2010年、宇宙の旅だ。未来はもうすぐそこに来ている。宇宙キャップを被り、ジャージ姿で、自転車にまたがって、ゆっくりとこちらに近づいてきている。僕はただ凝視するだけだ。