ベストキッド
ベストキッドを観てきました。ジャッキー・チェンと、ウィル・スミスの息子、ジェイデン・スミス君が出演しているカンフー映画です。題名を聞けば「おや?」と思う方もおられるでしょう。1984年に劇場公開されたもののリメイクです。リメイクなので、ストーリーの根幹こそ前作を踏襲していますが、設定や内容に大幅な変更がされています。なにせ、前作が空手だったことに対し、今回はカンフーですから。放題は「ベストキッド」だけど、原題って「カラテキッド」じゃなかったっけ? カンフーキッドじゃなくて良いの? という疑問はさておき。それに伴い、師匠の名もミヤギからハンに変わっていますし、舞台となる場所もアメリカから中国へと変更されています。主人公が白人から黒人、師匠が日本人から中国人と遷移している様は、なんとも象徴的。もともとベストキッドが好きだった僕ですが、更に大好きなジャッキー、そしてカンフー映画というこの食い合わせが不味いわけは無く、二時間二十分という長い尺でしたが、いやあ、もう満足満足。カンフー映画のみならず、少年が成長していくヒューマンドラマの正道、王道を行く映画だったと思います。ヒロインは可愛いし、敵役は憎たらしい。従来の中国、香港産カンフー映画だったなら、あるいは野暮ったくなりがちな笑い所を、アメリカっぽいテイストがうまく作用して、洗練されている感じがします。ただまあ、大会の大型液晶に映し出される映像や、劇終の瞬間の停止画像(主人公が半目で停止しちゃってて、もっと良い停止箇所があっただろ!的な)なんかは、一昔前に僕が観ていたカンフー映画的で、懐かしさと共に苦笑してしまう場面もありつつ。しかし、師匠役のジャッキーの存在感には舌を巻くばかり。ジャッキーと言えば、派手なアクションとコミカルなリアクションで、何でもかんでも「ジャッキー色」にしてしまうイメージがありましたが、今回コミカルさはほとんどありません。不器用で陰のあるアパートの管理人と言う雰囲気を十二分に保っていて、それが涙を誘う場面も。名作「グラントリノ」のクリント・イーストウッドの様……と言ったら言いすぎなのか、いや、過言では無い筈。というか、後に聞いた宇多丸さんの映画評論でも同じ印象を持たれていたので、大丈夫です。他にも「うーむ、蛇足では」と思える箇所が幾つかありましたが、まさに、細かいことはどうだっていいんです。俳優ジャッキー・チェンと、名子役ジェイデン・スミス君の心の交流を、是非とも夏が終わる前に観に行ってください。僕は5回ほど、涙腺が決壊寸前になった瞬間がありました。ベストキッドでお馴染み、最後のあのポーズ(実はちょっと違うんですけど)が出た瞬間、「よっしゃあ!」と心躍るのは間違いありません。良い映画って、ほんとうに良い物ですね。野間