日経の社説について
日経の社説で気になる記事を見つけたので記事を転載し、コメントを書こうと思います。ダイムラークライスラー迷走の教訓(社説) ダイムラークライスラー迷走の教訓(社説)2007/04/06 日本経済新聞 朝刊 P 2 独ダイムラークライスラーのディーター・ツェッチェ社長がベルリンの株主総会で、米クライスラー部門の分離・売却に向けて「複数の候補と交渉している」と表明した。「世紀の合併」と騒がれた独米の自動車統合は、発足から九年で解体の道をたどる。なぜ合併は失敗したのか、背景を探ると、日本企業にとっても貴重な教訓が浮かび上がる。 過去の巨大再編での失敗は、理念ばかりが先行し、現実が追いつかなかったケースが多い。その代表例が新旧メディアの融合を掲げた米AOLタイムワーナーであり、世界企業に生まれ変わると宣言したダイムラークライスラーである。 合併の仕掛け人であるダイムラーのユルゲン・シュレンプ前社長は「世界の自動車産業で生き残るには年産四百万台の規模が最低線」という説を提唱した。大西洋をまたにかける巨大合併で事業基盤を一気に拡大し、「規模の経済」をフルに享受するというシナリオである。 だが再編による巨大化と、規模の経済による生産性の向上は似て非なるものだ。新車の開発体制を一元化したり、車台と呼ばれるクルマの下部構造を共通化したり、地道な作業を積み重ねてはじめて相乗効果やコスト削減の余地が生まれ、規模の大きさが競争優位に転化する。 ところが、ダイムラーの場合は当初から独米間に不協和音が流れ、共同作業はスムーズに進まなかったようだ。ドイツ流を一方的に押しつけられるクライスラー側の反発もあっただろう。互いに長所を学び合う日産自動車と仏ルノーのような関係は生まれず、合併は実を結ばなかった。「クライスラー売却」が伝えられて以降、ダイムラー株が跳ね上がったのは、何とも皮肉である。 日本でも本格的なM&A(企業の合併・買収)時代が到来し、多くの企業が買収などをテコに成長戦略を描こうとしている。これまで自力成長だけに頼ってきた日本企業が買収や合併をタブー視せず、前向きな姿勢に変わったことは評価に値する。研究開発体制を拡充したり、グローバル化を加速するために、M&Aは有力な手段になりうるからだ。 しかし、会社を売ったり買ったりの決断は一瞬のうちにできても、実際の統合を成功に導くには粘り強い取り組みが必要だ。「巨大組織に君臨したい」といった経営者個人の思いや「バスに乗り遅れるな」式のムードに流されたM&Aは、やはり上策ではない。将来ビジョンと、それにもまして目標に一歩ずつ近づく忍耐力がM&Aの成功には不可欠だ。まず、この部分についてなぜ合併は失敗したのか、背景を探ると、日本企業にとっても貴重な教訓が浮かび上がる。図書館等で過去の日経新聞を閲覧すれば分かるのですが、97.98年ごろの日経新聞は盛んに400万台クラブに入らないと次世代動力を開発できないから日本の中小自動車会社の将来は大変だとか、ホンダ自動車の生産台数が400万台に及ばないという理由で次世代動力の開発コストが捻出できないから欧州やアメリカメーカーに後れを取る可能性があるとか散々国内自動車会社の危機を煽りまくってたのですが、8年も経つとそんなことはすっかり忘れるんでしょうか…。次、この部分。合併の仕掛け人であるダイムラーのユルゲン・シュレンプ前社長は「世界の自動車産業で生き残るには年産四百万台の規模が最低線」という説を提唱した。これについては当時日経新聞はこの切に賛同していた節がうかがえます。400万台超えているのはGM,フォード、トヨタ、ルノー&日産でそれ以外のグループは経営危機に陥る可能性があるとか書いてたのを読んで当時「これは大変になるぞ」とえらくびびった記憶があります。びびるだけ無駄でしたが…。(笑)また昔の記事なので記憶が定かじゃないのですが、もしその当時から「~しそうだ」とか「なりそうだ」とか根拠不明な世迷い言を書いていたのであれば、日経のポエム記事はかなり長い伝統と技術を誇っている事になります。ちょっと調べてみようかな…。次、この部分。新車の開発体制を一元化したり、車台と呼ばれるクルマの下部構造を共通化したり、地道な作業を積み重ねてはじめて相乗効果やコスト削減の余地が生まれ、規模の大きさが競争優位に転化するこの部分は間違っている可能性があります。そもそもこの記事の内容は製造会社にとっては当たり前の仕事なので、何故それが出来なかったか掘り下げるのがベターと考えます。個人的にはそもそも十分な開発、製造能力を持たないメーカー同士が合併したのが原因と考えます。そのため折角合併しても開発、製造能力を向上させることが出来なかったために合併が失敗に終わったというのが本当の所だと考えています。ちょっと厳しい書き方かもしれないですが、所詮外国車メーカーの開発、製造能力はそんなもんなのです。外国車メーカーの開発、製造能力の実態を知ってしまえば容易に想像できることなのですが、なかなかそこまで踏み込むのは難しいかもしれません…。次にこの部分。将来ビジョンと、それにもまして目標に一歩ずつ近づく忍耐力がM&Aの成功には不可欠だ。最後だけはきちんとつぼを押さえてくれたと思います。まさにこの分野が日本の会社の苦手な所なので、これからはこの分野で苦い経験を積む=製品の出来栄えが外車並みに著しく劣ってしまう可能性があるという事をこの記事は示唆していると思います。個人的には特に最初の部分については日経新聞の過去の反省を書いて欲しかったと思うのですが、それはさておき、何気に国内自動車会社の今後のリスクを示唆しているような印象を受けました。あと、クライスラーですが、所詮はアメ車メーカーなんであんなもんでしょう…。ご愁傷様です。個人的にはこの株券は買う気にはなれません。(むしろ全力で空売りしたいくらいです。)