日経の相反する二つの記事について
今日の日経で興味深い記事を二つ見つけたので以下引用します。その1成長企業の軌跡(6)トヨタ自動車(株価上昇率22位)(ブラックマンデー20年) 成長企業の軌跡(6)トヨタ自動車(株価上昇率22位)(ブラックマンデー20年)2007/10/29 日経金融新聞 P 5 トヨタ自動車(7203)にとってブラックマンデー以降の二十年は、「三河の田舎企業」から自動車メーカーとして時価総額世界一の巨大企業へと変貌(へんぼう)を遂げる道のりだった。 一九八七年六月期の連結業績は、売上高六兆六千七百五十四億円に対し経常利益五千十八億円。全国上場企業の経常利益ランキングでは、野村証券や東京電力に次ぐ三位だった。 それが二〇〇七年三月期(米国会計基準)の売上高は二十三兆九千四百八十億円と三・六倍に、税引き前利益は二兆三千八百二十五億円と四・七倍に増加した。税引き前利益が二兆円を超える日本企業は、トヨタのほかに見あたらない。 日産1社分相当 成長の原動力は海外販売の増加だ。八七年の世界販売実績は約三百八十三万台だったが、今年は子会社のダイハツ工業や日野自動車を含まないトヨタ単独で八百四十万台の見込み。この二十年間の世界販売の伸びは四百万台強と、日産自動車の全世界販売を上回る成長を遂げた。 とりわけBRICsをはじめとする新興諸国でモータリゼーションが加速した二〇〇〇年以降は、販売ペースが急上昇。直近五年間で世界販売は約三百万台増加した。一年あたりでは六十万台の増加で、富士重工業一社分の成長が続いてきた計算になる。 もっとも国内販売は八七年の百八十七万台から減少傾向にある。今年は前年実績を上回る百七十二万台の販売計画を打ち出していたが、国内市場の低迷で「百六十万台半ばまで落ち込む」(渡辺捷昭社長)見通しだ。 業績が低迷した時期もあった。一ドル=一〇〇円まで円高・ドル安が進んだ九四年六月期には、売上高営業利益率が一・五%まで低下。自動車輸出を巡る日米自動車交渉を経て、自動車の海外生産に拍車がかかった。 現地生産を強化 トヨタの海外生産拠点は、八七年時点では米ゼネラル・モーターズ(GM)との合弁工場など十数カ所だったが、その後は欧米や中国に工場を相次いで建設。現時点で世界二十六の国と地域に、計五十二の生産事業体が海外各地で現地生産にあたっている。 そして当時のトップだった奥田碩相談役が「二十世紀中に実現すべきプロジェクト」と号令をかけた、世界初の量産ハイブリッド車「プリウス」の発売と、ニューヨーク・ロンドン市場への株式上場を九九年までに達成。企業イメージの一新と、投資家のすそ野拡大を推し進めた。 近年、力を入れているのは株主配分の拡充だ。公的機関のトヨタ株放出に対応するために、九七年三月期から自社株買いを開始。これまでに二兆五千億円を投じ六億八千万株を取得。うち二億七千万株の自社株を消却してきた。 また二〇〇五年には、配当性向三〇%を目標として設定。〇七年三月期には百二十円の年配当を実施し、連結配当性向は二三・四%まで上昇している。 ただグループ戦略には課題も残る。トヨタは九八年にダイハツ工業を、〇一年には日野自動車の株式を追加取得し子会社化している。だがダイハツの時価総額はスズキの四分の一、日野はいすゞの半分と振るわない。ダイハツ、日野ともに売上高に占める海外比率は三割弱にとどまり、海外展開で後れを取っている。 「商用車と低コスト車の開発は今年度の重要テーマ」(渡辺社長)。先進各国で成功を収めてきたトヨタも、新興諸国では再びチャレンジャーとなる。ダイハツ、日野を含めて新興諸国で確かなシェアを築けるかどうかが、トヨタが輝き続けるための条件といえそうだ。 (名古屋支社 北沢宏之)この記事には秀逸な所とそうでない所(こっちは本当にたいしたことないですが)が一つずつあります。秀逸な点は自動車産業を成長産業とみなしている所です。これは国土交通省のサイトを見れば一目瞭然です。逆にそうでないところは最後の「先進各国で成功を収めてきたトヨタも、新興諸国では再びチャレンジャーとなる。」のくだりで、商圏を拡大するという意味では合っているのですが車の開発、生産という意味ではチャレンジャーじゃなくてリーダーの方が実態に即していると思います。まあ、これはたいした問題でもないのであまり気にしていません…。しかし、次の馬鹿記事を読むとやはり指摘せざるを得ないのかな?と思います。その2環境と少子化が問う車の未来(社説) 環境と少子化が問う車の未来(社説)2007/10/28 日本経済新聞 朝刊 P 2 東京モーターショーが始まった。その直前に、トヨタグループのセントラル自動車が仙台市郊外に車両組み立ての新工場を建設すると発表した。日本車の競争力は強く、自動車メーカー各社は総じて収益が好調な今、新たな供給体制構築を進めている。だが、現在の成功が明日の成功を保証するわけではない。 今日の自動車産業の競争の焦点は環境対応だ。これまで日本車の独壇場だったハイブリッド車でも、欧米勢の追い上げが始まった。燃料電池を含めた電気自動車の開発では、新興の米テスラ・モーターズなど新たな挑戦者が次々に登場している。 トヨタ自動車は、航空機で使われ始めた軽くて強い炭素繊維を導入したコンセプト車を披露した。ホンダの目玉は、指で押すとへこむほど柔らかいシリコン素材を使った燃料電池車だ。いずれも素材の領域まで踏み込んで環境性能の向上を目指す。 過去百年間「化石燃料でエンジンを動かす」という自動車の基本は変わらなかった。二酸化炭素の排出削減が地球規模の課題になる中で、二十一世紀のクルマは大きく変身するだろう。とりわけ電池技術の進化は急で、将来「エンジンのない車」が主流になってもおかしくはない。 日本メーカーの伝統的な強みは、品質改善や効率的な生産体制だ。今後は環境をめぐるイノベーション(技術革新)競争でも、ライバルをリードし続ける必要がある。東京モーターショーは、その意気込みを世界に発信する舞台である。 自動車産業のもう一つの課題は国内市場の低迷だ。日本の景気が緩やかながらも回復しているのに、新車販売台数は下げ止まらない。ある自動車メーカーの首脳は(1)少子高齢化に伴う需要層の減少(2)低所得層の増加による購買力の低下(3)若年層のクルマ離れ――などを指摘し、いずれも構造的な要因だと認めている。 欧米の自動車メーカー首脳が東京より上海など新興市場のモーターショーに関心を示すのも、日本市場の魅力が低下した証左といえる。日本市場の底上げに即効薬はない。消費者の選択のポイントは燃費や維持費の経済性だ。そうした要請に応えるクルマづくりを地道に追求することが、自動車産業の道だろう。この新聞社に限らずどうも新聞社はピント外れな馬鹿記事を堂々と社説にしたがる傾向があるようです。どういう神経しているのでしょうか?売国奴にも程があります。大きな問題箇所は赤字の部分です。自動車産業のもう一つの課題は国内市場の低迷だ。日本の景気が緩やかながらも回復しているのに、新車販売台数は下げ止まらない。再三繰り返すのですが、販売台数では現時点日本はアメリカの次の世界第二位のとても大きな市場なのです。もうすぐ支那とインドに抜かれる運命にありますがそれでも巨大市場には変わりないのです。それがさも衰退市場の代表格であるような書き方をするのはどうかと思います。それに次の部分もおかしいです。日本の景気が緩やかながらも回復しているのに、新車販売台数は下げ止まらない。ある自動車メーカーの首脳は(1)少子高齢化に伴う需要層の減少(2)低所得層の増加による購買力の低下(3)若年層のクルマ離れ――などを指摘し、いずれも構造的な要因だと認めている。一方で景気回復していると書いておきながら、文章の後半部分はどう考えても景気回復と関係ないとしか思えない事象ばかり羅列しています。一体どっちやねんと言いたくなります。しかもこれが社説なんだから笑わせてくれます。あと、いつもどおりというか後半部分も最悪です。欧米の自動車メーカー首脳が東京より上海など新興市場のモーターショーに関心を示すのも、日本市場の魅力が低下した証左といえる。これ、主語誰やねん?、そして証拠どこにあるねん?この内容は全くでたらめです。これは、世界第二位の市場である日本で欧米の自動車が全く売れないのが実態であってその原因は欧米製品の商品力が極めて脆弱だからなのですが、何故そのことに触れないのでしょうか?そして、欧米自動車会社が上海に興味があるのは、競合相手が殆ど勝ち目のない日本製品ではなく欧米の製品よりも数ランク商品力の劣る支那製品(こっちであればかなり勝ち目がある)だからなのと、市場拡大余地が望めるからという理由であって日本市場が魅力的でない(ある意味合ってるのか?)というのとはニュアンス以上に違うと思うのですが、どうなんでしょうか?トリの部分も笑わせます。日本市場の底上げに即効薬はない。消費者の選択のポイントは燃費や維持費の経済性だ。そうした要請に応えるクルマづくりを地道に追求することが、自動車産業の道だろう。燃費や維持費の経済性において日本製品はまだまだ劣っているんでしょうか?おしそうであればそれらに勝る外国の会社を具体的に書いて欲しいです。まあ、日本市場の底上げに即効薬がないのは認めますが(移民という手はありますが現実的ではないと思います。)そもそもこの記事は日本市場が低迷であるということの定義を間違えているからいつものように構成がぐだぐだになるのです。あと基本的な数値を把握していないんじゃないでしょうか?もし把握していてこの記事を書くのであれば相当な確信犯だと思います。しかし、よくこんなの社説に載せるよな…。