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カテゴリ:備後・福山情報
ふくやま文学館で「趣味の人・井伏鱒二」と題する講演会が開かれた。
この館で「ふくやま文学館所蔵資料が語る井伏鱒二」と題する展示が昨年暮れから3月5日まで開かれているのにちなみ、同館の館長さんが話した。 この館長さんは、井伏の個人文学館ともいえる同館の館長を任されるだけあって、井伏研究では第一人者だそうだ。なんでもこの館では、今年度(2016年度)に3回、福山出身の井伏に関する展示を行っており、3回目の今回は、井伏の作品に関する展示でなく、趣味や交遊を通じた人となりを伝える企画展にしたのだそうだ。 井伏鱒二(1898~1993)は、明治・大正・昭和・平成を生きた文学者である。初期の山椒魚のような短編や、本日休診、遥拝隊長、駅前旅館などのユーモアとペーソス溢れる短編から、60歳過ぎての代表作であり原爆文学の金字塔「黒い雨」まで、数多くの多彩な作品で知られる。 福山市はミステリー文学の新人賞を主催しているが、そんな賞よりも、井伏を顕彰した「井伏鱒二文学賞」こそ、福山の名を全国に高らしめる賞だと思う。 館長さんの講演は、時折、館の企画展の宣伝を挟みながら、滑舌よく堂々とした話が続いた。聴衆は定員80人に対して60人ほど。平均年齢は70歳を超えているだろうか。地元福山出身の文学者にかかわる講演を、もっと若い人にも聴いてほしかった。 格調高い講演で、残念なことを一つ。井伏が将棋好きであったことは広く知られているが、この館長さんは、将棋と囲碁の違いをよくご存じないようだった。将棋の話をしていた途中で、囲碁を指すなどという面妖な言葉が挟まれる。配られた資料に井伏の将棋五段の免状の文面が引用されていたが「日本棋院連盟」なる団体名が記されていた。 日本将棋連盟か、日本棋院か、どっちやねん。 ここは当然、日本将棋連盟でしかありえない。日本棋院連盟なる署名であれば、偽免状だ。 いくらご高説を聴いても、一点の事実誤認、間違いで、講演そのものが嘘くさくなってしまった。内容のある、興味深い講演だっただけに残念だ。リアリティのある小説を書いても、一つ、事実誤認があると嘘っぽくなってしまうのだなと自戒したしだい。 この館長さん、よその講演でも、日本棋院連盟などとのたまわなければよいのだが。ふくやま文学館のみならず、井伏さんの名誉にもかかわってくる。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017.01.16 09:00:06
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