「ラビリンス 下」(ケイト・モス)
台風も通り過ぎ、今朝から静かである。晴れるかと思ったが、雨だった。山間の田舎なので、うちは大丈夫だったが、風は強かったらしく、稲はすっかり倒れている。今日は町へ出てみたが、さすがに竹や木が国道に倒れ込んでいて、業者が切って片付けていた。 この小説は、アルビジョア十字軍や異端審問が行われた13世紀初頭と現代を舞台にしている。輪廻転生でつながったアレースとアリスという二人の女性が主人公である。その他にも多くの登場人物が輪廻転生というキーワードでつながっているので、見当を付けながら読んでいくのもおもしろいだろう。インノケンティウス3世やシモン・ド・モンフォールなど、世界史を習った人にはなじみのある歴史上の人物も出てくる。 十字軍や異端審問により多くの人々が犠牲となった。この小説の中でも、そうした場面はリアルに悲劇的に描かれている。そして、アレースの巻き込まれる事件の展開にもハラハラさせられる。 「聖杯」についての設定もおもしろい。「ダ・ヴィンチ・コード」でも「聖杯」が中心テーマだったが、「ラビリンス」での「聖杯」はまた別のものになっている。しかも、その起源は古く、キリスト生誕より遙か以前の話である。どちらの物語も「聖杯」が「杯」ではないところが事を複雑にしている。 「ラビリンス」英語版原書の表紙には副題として"three secrets, two women, one grail"と書かれている。また、タイトルにもなっている「迷路(ラビリンス)」の図柄も描かれているので、イメージをつかみやすい。「ダ・ヴィンチ・コード」には公式ホームページに様々な教会や遺跡の写真が載っていた。ヨーロッパに行ったことのない私にとっては、それは物語により臨場感を与えるものとなった。「ラビリンス」には公式ブログはあるものの、プロローグの抜粋やイベント情報が載せてあるだけだ。せめてカルカソンヌやモンセギュールの写真、カタリ派に関する一般的な知識などが掲載されたホームページが作られると、この本の魅力も倍増するのではないだろうか。出版元のソフトバンク・クリエイティブにはがんばってもらいたい。