北ア・片貝川水系成谷遡行
沢訓練ということで新人2名(Y本さん、Yたさん)を連れての遡行。難易度が比較的低くてやまやろうが遡行していない谷として、成谷を選んだ。この谷は鉄砲水に注意が必要。当日の天候は、午後から雨の予報。スピード勝負ということで敢えて入渓した。下山路となる僧ヶ岳東又コース起点にやまやろうの車をデポして入渓地へ。8:14 遡行開始。先ずは片貝川を徒渉して右岸に渡る。3人スクラムを組んでぶっつけ本番の徒渉。5段の砂防堰堤が連なる。左岸に巻き道があるようだが、不明瞭だ。背丈以上のヤブをこぐ。先頭で進んだやまやろうは、手首が擦り傷だらけになった。8:38 ヤブこぎは終わり、いよいよ谷に入る。ホールドが豊富な沢筋。水量も豊富だ。わずらわしい虫は皆無、下界の暑さを忘れるほどの快適な谷だ。渓相は美しい。何度も足を止めて、写真に収める。新人には余り口出ししない。それでいて手足を使うテクニカルなルート。当惑しているかもしれないが、やまやろうだって新人の時は訳も分からず連れて行かれたわけだ、沢にしても山スキーにしても。体力さえあれば何とかなるもの。9:08 ここで谷は右方に屈曲する。標高800m付近と思われる。9:14 左岸崩壊地付近。真新しい崩壊が続く。倒木もちらほら。大きな石もぐらぐらなので、手を掛ける際は注意が必要だ。9:31 二又。右又へ。地形図上での「成」の下辺り。9:55 成谷最大の滝。ここは右岸を高巻く。やまやろうトップでロープを伸ばす。バンド下の斜面は崩れやすくて足場が不安定だ。そろりそろりと上に向かうも支点が取れない。途中で気休め程度に木の根に支点を取る。10:12 バンド上の頑丈な木の幹に確保点を取る、これで安心。二番手のYたさんはプルージックで上がってもらい、ラストのY本さんはやまやろうが確保(問題あったが)。高巻き支点からの上部2段の滝。もう少しロープを伸ばせば1回で終了できた。確保点から5mほど進んだところで、ロープ不要の下降路があったのだ。10:54 高巻き終了、沢に立つ。上部2段の滝はフリーで越えることができた。ものの本によれば、滝上は日本庭園のような渓相とのこと。まさにその通りであった。流れは穏やかになり、コケや草本が流れにからむ。透き通る瀞であるが、魚影は見なかった。皆、美しさに嘆息。時折、雨がぱらぱらと来る。鉄砲水が脳裏に浮かぶ。本によると更に上流で遭ったということで、油断ならないのだ。実はY本さんが2段滝の上でデジカメを落とした。水中を探すかそれとも先に行くか。リーダーとしての判断が求められた。天気は思わしくない、苦渋の決断(と本人の納得)で、先を急いだ。今度からはデジカメには紐を付けましょう。11:43 沢水がこの上から伏流する。Yたさんが見つめる苔むした岩の下から、こんこんと水が湧いているのだ。不思議なものだ。ここで昼食、水汲み。この先、水流は出たり消えたりする。12:11 ものの本によれば、腕力で越える3m滝というのはここのようだ。岩にはいつくばり、全身のフリクションを使って何とかクリアする。12:15 ものの本によれば、ペンキマークがあるということで、注視しながら遡行する。見つけた。沢の真ん中の大岩に赤ペンキで矢印と「イオリ」と思われる文字が確認できた。その矢印の先には細い溝がある。ここを登るということだ。ペンキ岩の上にケルンを積んでおいた。溝に入ってから、雨が降ってきた。まさに時間との勝負であった。雨量は少なかったので鉄砲水になったかは疑問だ。しかし予定通り、安全な時間帯に安全地帯に入れたことに意味があるのだ。12:29 溝から尾根筋に出る。1338m付近と思われる。激しいヤブの中、ひたすら東に進む。尾根のヤブに辟易し、新たな溝を伝ったらほんのわずかで伊折山の脇に出た。12:40 伊折山。意外な感じでポンと山頂に出たので、思わず笑ってしまった。これで生還できる。土砂降りである。東又ルートを黙々と下る。13:35 登山口に到着。雨は大したものではなく、川もそれほど増量していない。成谷にいても大したものではなかっただろう。自分達の脚力を信じて遡行を終えられたことが自信につながった。