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オリンピックに然程興味はないが、男子フィギュアスケート・高橋大輔選手のフリー演技は見ていて思わず胸が熱くなってしまった。銅メダル、心からおめでとう。普段はクールな岡山県民もこの日ばかりは皆で大盛り上がり(^^)v 更に織田選手も小塚選手も大健闘!3人とも本当に見事な演技で素晴らしかった。
高橋選手の世界一のステップに見入り、ジョニー・ウィアー選手の採点におやッ!? と思いつつ、2月11日~20日の間に読んだのは文庫本が6冊。アルバイト先で何万冊とある文庫本の整頓・補充を日々やるようになってからは、お客様に尋ねられてもなるべく答えられるよう、文庫本ばかり読んでいる(時折新書も読むけど)。この中で印象に残った本をいくつか御紹介したい。 「手紙」 東野圭吾 文春文庫 生徒の父に差別文書=高校教諭を逮捕-福岡県警 生徒の父親に人権を侵害する文書を送り脅迫したなどとして、福岡県警久留米署は21日、脅迫と偽計業務妨害の疑いで、同県久留米市立高校教諭を逮捕した。(2月21日 時事通信) 身近な至る所に差別は存在する。「手紙」は強盗殺人罪で服役中の兄を持つ弟が、進学、恋愛、就職と人生のあらゆる局面で差別を受けるという、犯罪加害者の家族の物語。 この主人公が差別を受ける場面というのが、田園調布に住むお嬢さんとの結婚だとか、ヴォーカルを担当していたアマチュアバンドがプロにスカウトされた時だとか、一流企業に就職する際だとかそんなのばかり。話の内容は興味深かったものの、薄っぺらい気がした。本気で素性を隠しておきたければ、恋人にしろ就職先にしろ、普通そんなところは狙わないと思うが。 実際には犯罪加害者の家族というだけでこれだけの差別を受けることはないだろう。自らが「兄は殺人者です」と宣伝して回るか、閉鎖的な田舎にずっと住み続けていれば別だろうけど。ちょっと設定に無理があるような気がして、私は素直に感動出来なかった。 「差別は当然だ」と語る会社社長が登場するが、世の中には様々な差別が存在する。身内が犯罪者というのはまだ悪の元がはっきりしており、自らが告白しないかぎり他人はそこまで気付かないものだ。一方、人種差別や障害者差別など外見ではっきりそれと分かり、尚且、一切責めを負う必要もないのに生涯差別される人達はどうなる?それでも差別は当然だと言えるのだろうか? 冒頭の時事通信のニュースは今日のものだ。被差別部落を差別する内容の文書を送付したそうだが、一体彼等は何故差別を受けなければならないのか?誤った偏見を正さなければならない立場である教師がこのような行為に及んだことは、どんな理由があるにしろ許してはならない。 「家の鍵―明日、生まれ変わる」 ジュゼッペ・ポンティッジャ 集英社文庫 先程の「手紙」もそうだが、こちらも映画化された現代イタリア文学の傑作。 障害を抱えた子供に降りかかる数々の苦悩。同情の裏に隠された周囲の偏見。しかし息子は、自らの宿命から生まれ変わるべく、絶望の淵から立ち上がる。障害を抱えたわが子という現実に、親はいかにして直面すればいいのか。親と子の本当の絆とは何か。障害のある息子をもった作者自身の経験をもとに、家族愛、そして生きることの意味を問いかける―(「BOOK」データベース) 犯罪加害者が障害児に、兄と弟が親と子になっているだけで、「手紙」とこの作品はどことなく似通った印象を受けた。こちらの方が事実に基づいているだけに作品に深みがある。但し、残念ながら文章は翻訳物特有の読みにくさがあちらこちらに…(^^ゞ 「一応の推定」 広川 純 文春文庫 轢死した老人は事故死だったのか、それとも愛しい孫娘のために自殺したのか。ベテラン保険調査員・村越の執念の調査行が、二転三転の末にたどり着いた真実とは? 村越さんが調査を依頼される損害保険会社の火災新種部門のサービスセンターで私も10年以上前に働いたことがあるが、事実は小説より奇なりという言葉を実感するような、保険会社数社を巻き込んだ難事件(?)が実際にあった。作者の広川さんは保険調査会社を起こした方らしいので、そうした事件を数多く手掛け、参考にされたのかもしれない。 二転三転の末の意外な結末はとってつけたようでちょっと苦笑したが、それでもデビュー作とは思えぬ文章力と構成は素晴らしい!ミステリー小説に馴染みがないせいかもしれないが、あまりの面白さに一気に読めた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.02.21 23:11:04
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