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公平な視点と穏やかな語り口が魅力の歴史ブログを綴られているgundayuuさんが以前薦めて下さった、吉村 昭さんの「長英逃亡」上・下巻を先程読み終えた。
“蛮社の獄で政治犯として捕らえられていた高野長英が、牢破りをして全国を転々として逃亡する足跡が克明に描かれているのですが、すごくスリリングで、その中でも翻訳書を残していく長英の執念に満ちた半生が感動的”とのgundayuuさんのコメントどおり、長英の6年4ヶ月に亘る逃亡生活の様子を私も手に汗握りながら貪り読んだ。 正直、高野長英に関しては今まで全く興味がなく、江戸時代の蘭学者ということぐらいしか知らなかったため、今回初めて彼が辿った過酷な運命を知って喫驚し、その呆気なくも無残な最期には胸を締め付けられた。 また、長英の破牢・逃亡を手助けした多くの人々―宇和島藩主・伊達宗城のような大名から、堀内忠良や伊東昇迪、二宮敬作といった蘭学仲間や医師仲間、内田弥太郎ら門人達に長英が獄中で牢名主だった時に恩顧を受けた者まで―の、何とか長英を守り抜くんだという熱い思いや友情にも心を打たれた。 中でも長英を匿ったことがバレ、100日もの過酷な拷問を受けて体が不自由になりつつも決して口を割らなかった医師・高野隆仙と、長英が破牢するための放火がバレて火罪(のちに死罪)になった栄蔵の酷い最期が印象に残っている。 冬ノ夜ノ更行マゝニ人語モ漸ク聞ヘ履声モ稀ニ響キ妻戸 ニ響ク風ノ音スサマシク最物凄サニ物思フ身ハ殊更眠リモヤラ レス独リ机ニ倚テ燈ヲ掲テ書ヲ讀ケルニ夜イタク更ヌレハイツシカ 眠ヲ催シ気モツカレ夢トナク幻トナク恍惚タル折節或方ヘ招カレイト廣 キ座敷ニイタリケレハ碩学鴻儒ト覚シキ人々数十人集會メイロイロ物語 シ待ケル… 長英の運命を狂わせた蛮社の獄。彼が幕府批判の罪に問われて捕らえられるきっかけとなったのが、外国情勢への対応を述べた「夢物語」という著書だった。 当代随一の蘭学者と謳われていた長英の、囚人になって以降の人生はまさに悪夢の夢物語だったことだろう。 この本を読み、主人公・高野長英の生き様と彼を助けた人達の心根に感銘を受けた。他にも長英について書かれた小説を色々と探して読んでみたいと思う。 御紹介下さり、本当に有難うございました お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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