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今年の読書目標は「読まず嫌い克服」と定めよう。
私は女性作家が苦手だ。といっても女性作家そのものが苦手なのではない。澤田ふじ子さんや杉本苑子さんの時代・歴史小説は、むしろ女性作家ならではの繊細さが好ましい。 苦手なのは女性作家の小説の多くが恋愛を主題に置いていること―恋愛小説がダメなのだ。特に女性の描く恋愛は濃厚すぎて、いけない。 なので今まで女性作家の現代小説はなるべく避けてきたが、今月は早速、読まず嫌いを克服すべく女性作家の小説を3冊ほど借りて読んでみた。 いきなり小池真理子さんや岩井志麻子さん級に挑む勇気も度胸(?)もなかったので、とりあえず恋愛とはあまり関係なさそうな作品からチャレンジ。 (余談だが、小池さんのご主人である藤田宜永さんも恋愛小説のイメージが強くてずっと敬遠していたものの、昨年初めて「壁画修復師」という作品を読んでみると、静謐な中に温もりがあり、大人の男性の匂いを感じさせる洒落た小説だった。男性が描く淡い恋愛話は素敵かも) まず最初に読んだのは、秋吉理香子さんの短編集「雪の花」。 表題作は、雪深い福井県の地方から上京して結婚した夫婦が、バブル景気に乗って中古車販売会社を興したもののバブル崩壊から経済的な困窮に陥り、死を覚悟して帰郷する。だが、自分達の棺代わりの穴を掘っていると雪の中からあるものがひょっこり顔を出す。初老夫婦がそこで見つけた、そのささやかで美しい希望とは?―という、切なくも胸が温かくなる話。 とはいえ…希望は見つかっても無一文でどうやって二人は東京へ帰るつもりなのだろう? 続いては矢口敦子さんの「そこにいる人」。 大学1年生の直子には肝臓に欠陥のある姉・幸恵がおり、心ときめくはずの大学生活も家事の手伝いやら入院した母に代わって幸恵の世話やらで思うように満喫出来ない。そんなある日、幸恵の症状が悪化し、肝臓移植の必要に迫られる。自分の肝臓を提供すべきか?悩む直子がついに決断をした時、思いもかけない事態が…という話。 年末の合同コンパで知り合った谷村という男性と直子との関係が好ましかった。 最後は湯本香樹実さんの「西日の町」。 話の内容はともかく、作者の表現力の豊かさや鋭さに圧倒された。第一作目の小説がいきなり国内外の賞を受賞したそうだが、この作品を読んでみても納得。歴史小説を読み慣れているせいか、ちょっと文章の一つ一つが飾られすぎかな?と感じなくもなかったが、非常に優れた作品であることには変わりない。短い話の中に湯本さんの才能やらセンスやらがギュッと凝縮されているにもかかわらず、それでもまだ何かが溢れ出てくるような印象を受けた。 今回読んでみた女性作家による3作品はいずれも読み応えのある小説で、読まず嫌いなだけだったとちょっくら反省。今年もまたより多くの素敵な作品に出会えそうな気がして、今から楽しみだ 1月に読んだ本 歴史・時代小説 ・?外の「武士道」小説 傑作短篇選 (森 ?外:長尾 剛 編) PHP文庫 2009 ・長英逃亡 <上・下> (吉村 昭) 新潮文庫 1989 ・幕末遊撃隊 (池波正太郎) 集英社文庫 2009 改定新版 歴史・時代モノ以外の小説 ・枯草の根 陳舜臣推理小説ベストセレクション (陳舜臣) 集英社文庫 2009 ・そこにいる人 (矢口敦子) 幻冬舎文庫 ・西日の町 (湯本香樹実) 文春文庫 2005 ・マグレと都市伝説 (鯨 統一郎) 小学館文庫 2007 ・雪の花 (秋吉理香子) 小学館文庫 2009 新書 ・キレる大人はなぜ増えた (香山リカ) 朝日新書 2008 ・「人間嫌い」の言い分 (長山靖生) 光文社新書 2004 エッセイ、その他 ・ことわざドリル (板倉俊之) little more 2010 ・霊界日記【THE SPIRITUAL DIARY】 (エマヌエル・スウェーデンボルグ【Emanuel Swedenborg】, 高橋和夫 訳編) 角川文庫 1998 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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