カテゴリ:Heavenly Rock Town
Heavenly Rock Townの住民は全員、町が管理している集合住宅で暮らしている。アパートメントは小さなものから高級高層アパートメントまで様々で、他にタウンハウス等もあるが、そちらはこの町に昔からいる方々が多く住んでいる。住居費が無料ということもあって頻繁に引越す人も多い。
私が暮らしているのはNew Wave地区の一画に建っている、3階建で各階2部屋の小ぢんまりとした瀟洒なアパートメントで、現在はそのうち5部屋に入居者がいる。 3階には私と、私のこの町での世話役でもあるThe B-52'sのギタリストであったリッキー・ウィルソン(Ricky Wilson)が、2階には且つてリッキーが世話役を務め、今ではすっかり友人となっているThe Cars(カーズ)のベーシスト兼ヴォーカルであったベンジャミン・オール(Benjamin Orr)と、99年8月に42歳にして癌でこの町に来た英国のニュー・ウェイヴ・バンド、Naked Eyes(ネイキッド・アイズ)のキーボーディストだったロブ・フィッシャー(Rob Fisher)が暮らしている。 そして1階にはユーゴスラヴ・ニュー・ウェーブ・バンド、VIA Talas(ヴィア・タラス)やEkatarina Velika(エカテリーナ・ヴェリカ。略してEKV)のベーシストで、38歳の若さでこちらへ来たセルビア・ベオグラード出身のボヤン・ペツァー(Bojan Pecar)がいる。 4人は私がここに来る前から ――どうやらベンが来てかららしいが―― 月に1~2度、誰かの部屋に集まっては飲んだり食べたり滅茶苦茶な演奏をしたりの小パーティーを開くほどに打ち解けており、3年前からは私も仲間に加えてもらっている。昨日はちょうどその集まりの日で、私達はロブの部屋で夜更けまで一頻り楽しんだ。 翌朝、ドンドンとドアを叩くような音で目覚めて時計を見ると、まだ8時前だった。せっかくの休日だというのに誰が何の用?ちゃんとインターホンだって付いてるのに、全く…。 ベッドから出るのが億劫で暫し毛布に包まってぼんやりしているうちに、その音が階下からのもので、ドアを叩いている程度ではないことが分かってきた。 こんな早朝から何やってんだろう?今日は珍しく5人共休みだから、誰かが日曜大工でもやってるのかしら?と、覗きに行こうかどうしようかベッドに寝転がったまま思案していると、今度は間違いなく私の部屋のインターホンが鳴った。 「おはよう、キオ。起きてるかー!?」 ドアの外からボヤンの声がした。昨夜のパーティーでは人一倍飲んでハメを外していたはずなのに、こんなに朝早くから普段どおりとは何とも元気な人だ。 「おはよう、ボヤン。今起きたところ。ちょっと待って」 私は急いでベッドから抜け出て洗顔を済ませると、パジャマを脱ぎ捨ててクローゼットにあった淡いピンクのセーターとジーンズに着替えてドアを開けた。 「せっかくの休みのところを悪いな。何でも1階の空き部屋に入居者が決まったらしくてさ、役所のヤツが朝っぱらから修繕に来てんだよ。ついでに皆の部屋も悪い所があったら直してやるって言ってんだけど、キオの部屋はどうだ?」 「ん…今のところ不具合は無いなぁ。でも何でボヤンがそれを?」 「実は今来てる役所のヤツ…っつうか正確には請負工事屋だけどよ、そいつが一緒にバンドやってたミランってヤツでさ。昔の好みで俺も手伝わされて、こうして各部屋御用聞きに回ってんの」 部屋の前でボヤンと立話をしていると、ちょうどその男性も階段を上がってこちらにやって来た。 「朝から騒々しくて御迷惑をお掛けしてます」 そう言って軽く頭を下げたこの男性もまた、ユーゴスラヴ・ニュー・ウェーブ・バンドのSarlo Akrobata(シャルロ・アクロバタ)やEKVでヴォーカル兼フロントマンとして活躍していたセルビア人ミュージシャンのミラン・ムラデノヴィッチ(Milan Mladenovic)であった。二人は83年からボヤンが脱退した90年までEKVで一緒にプレイした仲だった。 Rob Fisher (November 5, 1956 – August 25, 1999) Bojan Pecar (March 22, 1960 - October 13, 1998) Milan Mladenovic (September 21, 1958 – November 5, 1994) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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