カテゴリ:Heavenly Rock Town
「やぁ、君達まで来てくれたのか。割れた洗面鏡はミランが今し方硝子店に手配してくれたおかげで、すぐに持って来てくれるそうなんだ。ちょうどいいタイミングで彼が来てくれて助かったよ」
ロブは相変らず呑気そうな口調でそう言いながら、快く私達を部屋に入れてくれた。昨夜皆で散らかしまくった室内は既に小奇麗に片付けられており、先に来ていたミランとボヤンがリビングの床に直に腰を下ろしてコーヒーを飲んでいた。 「悪かったな、ロブ。つい調子に乗っちまって。鏡の代金は俺とボヤンが払うよ、なぁボヤン」 「おう」 後から来た私達も彼等と同じように床に座った。 「ベンもボヤンも気にしなくていいよ。僕は君等ほど色男じゃないから、洗面鏡なんか髭剃りの時ぐらいしか見ないし。あ、君達もコーヒーでいいね、紙コップで悪いけど」 昨夜に続き、今朝もまた皆に押し掛けられたロブは嫌な顔ひとつせず、キッチンでコーヒーを淹れ始めた。本当にここの住人達は気心の通じた、仲間思いの男達ばかりで心が和む。4人に共通しているのは、嘗て地上で華々しく活躍していた人達であったにもかかわらず、見た目とは異なり意外と内向的で物静かな性格であるという点だった。ステージ上ではまるで別世界から来たかの如く光り輝いて見えた彼等も、ミュージシャンという仮面を外せばごく普通の、私達と同じ一介の人間にすぎなかった。新たに入居してくる人もそういう人だったらいいんだけど…。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023.06.25 03:57:37
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