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2013.12.28
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カテゴリ:Heavenly Rock Town
ベンと私がコーヒーを飲みながらリッキーを待っていると、ここの社員と思しき男性達が意外そうな面持ちで店内を覗いている。
「あれッ、この店って7時までじゃなかったっけ?もう9時前だけどまだ開いてる?」
「今日は10時まで営業するようにって或るお方に頼まれてんの。何か飲んでく?」
「じゃあコーヒーを3人分頼むよ」
 3人組の男性は私達の横を通り過ぎ、一つテーブルを挟んだ向こうの席に着いた。若干声を潜めて会話しているようだが、話の内容は丸聞こえだ。
「ディアベルとかいう長官と情報資源部のファロー部長の会見、凄かったな」
「僕、あの会見で初めてここのトップの顔を見ました。っていうか、名前も初めて知りました。僕が5年前に入社した時には既にウィルソン次官が長官代行を務めてましたし」
 ウィルソン次官ってリッキーのことかしらん?何だかとても偉い人みたい。実際、ここでは相当偉い人なんだろうけど。それにしても会見が凄かったってどういう意味?
 彼等にコーヒーを運び終えたジャニスは、どこか笑いを堪えているように見える。彼女はディアベル長官について何か知っているのかもしれない。
「社内でもかなり上層部の人間ぐらいしか長官のことは知らんかったみたいやで。ま、俺らの上司はそういうことに端から関心無さそうな人やけど。それにしてもあの長官がいきなりプレスリー町長に辞職勧告を突きつけたのにはビックリしたわ」
 ええッ!? お詫びの会見じゃなかったの!? 何それ、どういうこと?
「どうやらその件で先ほど町長がここに駆け込んで来たらしい。今頃長官と遣り合ってるのかもな」
「ですがテレビで見た限り、町長よりもディアベル長官の方が立場が上みたいでしたね。長官って一体何者なんでしょう?」
「ひょっとしたら町長っちゅうんはただの飾りで、実際にはここの長官や次官がこの町を牛耳ってたりして。何せウィルソン次官は悪魔と取引してるとまで言われる人やし…」
 話をしていた男性が何かに気付いたらしく急に口を閉ざした。噂のウィルソン次官当人がやって来たのだ。
「ベン、キオ、随分待たせちゃってゴメン。君達のお陰もあってやっと方が付いたんだ、心から感謝するよ。説明は後でゆっくりするとして長官がさ、二人に御礼を言いたいって」
「お前もこれで肩の荷が下りたな。でも御礼ってキオはともかく俺は何もしてねえし。大体長官ってどうせアイツだろ、俺苦手なんだよあのあ…」
 まだ喋っている途中だったベンの口をリッキーが慌てて塞いだ。どうやらベンも知っている人らしいが、「あのあ」って何を言おうとしたんだろう?3人組も会話を止めてこちらに注目している。
「ここだとちょっとマズい話もあるから場所を変えよう」
 そう言ってリッキーは私とベンの肩に軽く触れてから、徐に3人組の席に向かった。彼等の緊張が手に取るように伝わってくる。何せ悪魔と取引しているなんて噂が立つぐらいの、泣く子も黙るウィルソン次官だもの。
「3人共、今日は迷惑を掛けて本当にすまなかったね。原因究明から復旧作業まで大変だっただろう。君達の今回の活躍ぶりはランディから聞いてるよ。どうも有難う」
 システム研究開発部のランディのことかしら?でもって原因究明云々というのは何だっけ、アレ…どこでもドアじゃなくて――そうそう、バックドア!そのバックドアがどうとか言ってた件と関係があるのだろうか。
 3人は自分達の労を労ってくれたリッキーの温和な笑顔と優しげな口調に、幾分気を緩めたようであった。だがそれも束の間――。
「あ、そういえば俺が悪魔と取引してるって話してたようだけど、やっぱり君達もその噂を信じているのかい?」
「い、いえ、滅相もない!そんな根も葉もない噂、誰も本気で信じてなんかいませんから」
「ああ、そうだといいけどね」
 項垂れて血の気が引いている3人組を残し、私達はジャニスの店を後にした。

 リッキーの後に付いてディアベル長官の部屋へ向かっているはずなのだが、何だか前回来た時と同じ道筋を歩いているような気がしないでもない。
「ねぇ、長官の部屋って地下にあるの?」
「そうだよ。キオもよく知ってる人物さ」
 ここで私が知っている人物といえばリッキー、シー、ランディ、今朝リジーと歩いていたジミーという男、それに受付嬢のカレンとキャス、喫茶室のジャニスぐらいだけど。あと一人、人物と言えるのか分からないが悪魔のルーファス…。
「リッキーより立場が上っつったらアイツしかいないだろ、あの悪魔しか」
 嗚呼、先程ベンは「あの悪魔」と言おうとしていたのか…って、ええッ!? ディアベル長官ってルーファスと同一人物!? 何で名前も見た目も別人みたいに変わってるの?いやまぁ、どこかで見覚えのある顔だとは思ったが。
「でもあの会見した人物がルーファスだとしたら、どうしてディアベルって名乗ってたの?」
 私の問い掛けにリッキーの足がピタリと止まった。振り向いたリッキーは、店で笑いを堪えていたジャニスと全く同じ表情になっている。
「あー、そのことに関しては本人の承諾を得てから答えるよ」





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Last updated  2023.07.04 20:53:54
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