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2020.09.07
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カテゴリ:Heavenly Rock Town
情報管理センタービルの回転ドアを潜り、受付に向かおうとしたところで、奥のエレベーターから降りてきた人達の内の一人に声を掛けられた。
「キオちゃん、久しぶり!今日も配達?それともリッキーに何か用?」
 この声はシステム研究開発部のランディ(Randy Rhoads)だ。声の方に顔を向けると、ランディの他にもう一人、若い男性が一緒だった。見覚えはある気がするが、誰だったかな――。
「今日発売のガイドを配達しに来ただけなの」
「あ、ガイドブック3冊ね。こちらで預かるようにってリッキーに頼まれてるわ」
 私達の会話を耳にした受付嬢のどすこいさん…じゃなくてキャス(Cass Elliot)が、どすどすとこちらに寄ってきた。配達袋から取り出す私の手からガイドを奪うように3冊受取ると、早速パラパラとページを捲りながら受付へと戻っていった。そういえば7、8年程前にどすこいさんと初めて対面したのも、ここにガイドを配達しに来た時だったっけ。
「そっか、いつも大変だね。まだ配達途中?」
 ランディは私が手にしている配達袋に視線を落とした。
「うん。これからヒュージってお店とウィルベリーズに寄って、それからCCBとか回るの」
 CCBはCar Crashという、自動車事故でこちらに来た者達が集まる紹介制のバーで、T. Rex(T・レックス)のマーク(Marc Bolan)とスティーヴ(Steve Currie)がマスターをしている。私も以前、一時期同じアパートに住んでいたノルウェー出身のブルーノ(Bruno Hovden / Raga Rockers)に紹介してもらって何度か通ったものの、ちょっぴり苦い経験(※Episode 3)をしたため足が遠のいている。……あッ!それで思い出した!ランディと一緒にいるこの男性は、確かCCBで見かけたクリフじゃなかったっけ!?
「あれ?君、もしかして数年前にCCBで会ったことある?ひょっとして蝶々夫人?」
 やっぱりそうだ。蝶々夫人というのは、私が初めてCCBの仲間になった時に、日本人女性ということで分かりやすくマークがそう紹介したからだ。
「はい、ご無沙汰してますけどマダム・バタフライのキオです。久しぶり、クリフ」
「いや、奇遇だなあ。俺もちょうどこれからヒュージに行くところなんだ。今から一緒に行く?その重そうな袋、持ってあげるよ」
 そう言うやクリフは私の手から配達袋を受け取ると、軽々と提げた。
「有難う。ちょうどよかった、私、ヒュージって行ったことなくて…」
「じゃあ俺は先にウィルベリーズに行っとくから。キオちゃん、またね」
 一人で先に回転ドアを潜っていったランディの後を追うように、私達もビルを出た。
 Metallica(メタリカ)のベーシストだったクリフ・バートン(Cliff Burton)は、86年9月にヨーロッパツアー中のスウェーデンで、ツアー用のバスが路面凍結でスリップして横転した際に窓から投げ出され、バスの下敷きとなって24歳の若さでこちらにやって来た。
 ヒュージへ行く道すがらクリフに聞いて初めて知ったが、リッキーは今春から副長官に昇格したらしく(次官と副長官の違いが分からないけど)、その異動に伴いクリフは副長官補になったらしい。ということはクリフはリッキーの補佐をしている、という解釈で正しいのだろうか。半年前に豪華なタウンハウスへ転居したのも、ずっとリッキーの帰りが遅いのも、そのせいだったのか。

 ヒュージ(HUGE)はビッグサイズのメンズカジュアル店であった。道理で知らないはずだ、全く縁がない。しかし店長はあのジョーイだという。成程、何たってジョーイの身長は6ft 6in(198cm)もあるというから、普通サイズじゃキツいだろう。
 クリフに続いて店に入ってみると、笑ってしまうくらい大きな服が並んでいる。向こうにいる店員らしき男性もこれまたデカい。確かに『HUGE(巨大)』である。
「よぉ、クリフ……ん?その娘は?」
 こちらに近づいて来た巨大な店員に顔を覗き込まれた私は、思わず後退りしてしまった。
「あ、あの、今日発売の天界ガイドを届けにきたINTERZONEの者ですぅ」
「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ、キオ。彼はロビン、見た目のままKINGって呼ばれてる。ほらKING、ガイドを持ってきたぞ」
 クリフは私の怯え方を面白そうに笑いながら、KINGことロビンにガイドを手渡した。そういえばずっと配達袋を持ってもらってたっけ。目的を完了したので袋を受取ろうとすると、クリフは頭を振り、空いている右手で私の伸ばした手をそっと差し戻した。
「ウィルベリーズまで持つよ」
「有難う。何だかこき使っちゃってごめんなさい」 
 上司(リッキー)同様、優しい人柄なのだろう。類は友を呼ぶというが、この世界に来てからはずっとリッキーにくっ付いているからか、私(というかリッキー)の周りには穏和な人が多い気がする。
「オレの前でそういちゃつくなよ。やあ、キオ。オレはロビン、KINGでいいよ。まぁここにはキオに合う服はねえけど…」
「おい、KING!これを会計してくれ」
 客に呼ばれたロビンは全く急ぐ風でもなく、悠然とレジへと向かった。後姿もやはりデカい。でもって呼んだ客の方に目を遣れば、これまた厳つそうな男性で、慌てて視線を逸らした。
 Ratt(ラット)のギタリストだったKINGことロビン・クロスビー(Robbin Crosby)は、薬物中毒による注射器の使い回しによりHIVに感染し、02年6月にAIDSの合併症(並びにヘロインのオーバードース)により42歳でこちらに来た。ラット時代はなかなかの美青年だったロビンだが、地上で生命を終えた際には身長6ft 5in (196cm)で、体重は400ポンド(180kg)もあったという。

 Clifford Lee Burton (February 10, 1962 – September 27, 1986)
 Robbinson Lantz Crosby (August 4, 1959 – June 6, 2002)





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Last updated  2023.08.03 15:40:03
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