カテゴリ:The B-52's
『With the Wild Crowd! Live in Athens, GA』 CD+DVD
DVD released on March 20, 2012
1stアルバムから順を追って紹介するのが筋だと思うが、リッキーフェスで最初に取り上げるのは、2012年に発売された『ウィズ・ザ・ワイルド・クラウド!~ライヴ・イン・アセンズ』だ。意外にもこれがThe B-52s(2008年にThe B-52'sから改名)初のオフィシャル・ライヴ映像で、2011年2月18日に地元・ジョージア州アセンズのクラシック・センター・シアター(The Classic Center Theatre)での公演が収録されている。前年10月に先行発売されたCDとのセットでお買い得♪ 正直なところ、個人的にはリッキーのいないB'sにはそれほど興味が無い(すみません)ので買う気はなかったのだが、“バンド結成秘話やトップシーンに上り詰めるまでのヒストリーをメンバー自身が語るボーナス・インタビュー収録!” とのことで、このインタビュー見たさに購入してみた。これが大正解! 5人の出会いや結成時のこと、アルバムのことなどとともに、リッキーについても語られていて、若い頃の写真もふんだんに見られて嬉しい。リッキーについて語っているのは、彼の妹であるシンディ(Cindy Wilson)と、16歳から彼の親友だったキース(Keith Strickland)。 大半は7年前に綴った『リッキー物語』に書いたとおりであるが、興味深い話もいくつかあった。シンディの話によると、学生時分から自分で曲を書き、バイトに精を出して手に入れたテープレコーダーに録音していたリッキー。シンディもそれによく付き合わされたらしく、「ちょっと来て」と呼ばれてハーモニーを歌ったらしい。頭のいかれた歌詞を歌わされて楽しかった、とのことで、ある晩、ベッドの周りをX'masの電灯で飾り、カメラを持ってきてフォーク歌手のオンステージみたいにして撮影したのだとか。(うーん、これはリッキーの黒歴史なのでは…) 「彼は誰もやったことがない音楽をやろうとしていた。実際、彼は当時から『ロックンロールは死んでいく』と言ってたわ。そうして新しいことに挑んでいこうとした。ただ彼は音楽に対して遊び心を持っていたわね」とシンディは語っている。 元々音楽をやろうと思っていたわけではなく、たまたま酔っ払って5人でジャムセッションをしたらそれが面白かったため、遊びが高じてバンドとなったB's。必然的にリッキー(&キース)が音楽的な主導権を握っていたと思われる。ケイト(Kate Pierson)曰く、「リッキーは『練習しなきゃ!』ってタイプだった」とのことだが、初期のB's楽曲の音楽的支柱は紛れも無くリッキーの奇天烈ギターによるものだ。彼の奇想天外なギター演奏が、B'sの中核を成していた。勿論、フレッド(Fred Schneider)の歌唱力度外視のおっさんヴォーカル&作詞センス、ケイト&シンディの奇抜な頭や格好&様々なパターンの歌唱、ケイトがオルガンで奏でるベースライン、キースの正確なドラミングと諸々の楽器を弾きこなす音楽センスなどもB'sを作り上げた大切な要素ではあったけど。 1980年当時のRolling Stone誌のインタビュー記事によると、初めてジャムした際に行われた作曲方法――リッキーとキースが音楽のアイデアをジャムし、フレッド、ケイト、シンディが歌詞を即興で演奏する――はB'sが今でも採用している方法で、多くの場合数時間続くジャムはテープに録音され、リッキーが録音されたテープを研究した後、3~4分の曲に素材をアレンジする。「それは意識の流れのようなもの」だとフレッドは言い、「時々、私たちはいくつかの詞やアイデアを持っているが、ほとんどの場合、頭に浮かんだことは何でもジャムする」とのこと。 リッキーが『練習しなきゃ!』って思うのも分かる気がする…(^^; これだけリッキーがバンドの音楽を牽引していたにもかかわらず、B'sにはリーダーがいなかったという。誰もが口を揃えてリッキーは物静かでシャイだったと語ることからも分かるように、これだけバンドに貢献していながら決して前に出るタイプではなく、謙虚な人柄だったのだろう。 キースもシンディも、リッキーは親友や兄弟である以上に『Mentor』(優れた指導者、助言者。信頼のおける相談相手)だった、と言っている。彼は控えめで物静かな革新者であった。 さて、このDVDに収録されている故郷凱旋ライヴであるが、新旧のヒット曲を織り交ぜたナイスな選曲で、ステージも地元の観客も一体となってノリノリで楽しんでいる様子が観ているだけでも十分伝わってきて微笑ましい。4人とも還暦前後だというのに若いッ!キース(57)、フレッド(59)、ケイト(62!!)は若い頃から然程変わっておらず、シンディ(53)が若い頃に華奢だったぶん、逞しくなったなぁ…という感じ。ひょっとしたら同じ遺伝子を受け継いでいるリッキーも、ごっついおっちゃんになっていたのかもしれない リッキー在籍時との違いは、ケイトがほぼヴォーカルに専念し、キースがギターに転向。それに伴いドラムス、ギター&キーボード、女性ベーシストが参加しているため、演奏にかなり厚みが出て、今どきの音楽っぽく聴こえること。リッキー時代のスカスカ・ペラペラ感が大好きだけど、これはこれで時代に合っていていいと思う。どちらもやっぱりB'sサウンドであることに違いは無い。 『in Memory of Ricky Wilson』――86年以降のB-52s作品の多くで、最後に添えられているこの言葉。どんなに時が流れても、共に過ごしたメンバーは勿論のこと、私たちファンだってリッキーのことは決して忘れない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2020.10.15 15:29:33
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