Pastime Paradise

　「Mr.Boo! マイケル・ホイ（許冠文）祭」第4夜の今宵は、74年に公開された「聲色犬馬」を御紹介。
　映画デビュー作「大軍閥」は大成功を収めたが、まだ 邵氏兄弟公司（ショウ・ブラザーズ）との出演契約が残っていたため間に合わせで撮影された3本（「一樂也」「聲色犬馬」「醜聞」）の内の一つということで、これもエロティックなコメディ作品だ。
　相変わらずお色気シーンが多くてやや食傷気味ではあるが、見所はマイケルの七変化！医者、清掃員、カジノ従業員…と色んなマイケルが見れて眼福である。坊主頭とはお別れし、普通に髪があるのが嬉しい。

　マイケル演じる有名人の傑美芳は、夜になるとベランダから望遠鏡で前のビルを覗いている。ビルの窓からはポルノ撮影、ソープ、雀荘、カラテ道場、いそしむカップル達が丸見えなのだ。
　傑美芳は映画のレビューを書き、競馬のヒントを手当たり次第に教えるが、胡錦（フー・チン）演じる胡錦からのからかいを避けることができず、悲惨なからかいを受ける羽目に。
　有名な医師・呉新松（マイケル）は常に威厳があり紳士的だったが、白小曼演じる患者の余娟娟にあの手この手で誘惑され、とうとう彼女の家で手を出してしまう。そこへ突然現れた男二人に写真を撮られ、いつの間にか行為中の声も録音されていた。実は余娟娟は美人局だったのだ。哀れ、呉新松は多額の金銭を支払う羽目に…。
　マカオのカジノで働く江朗（これまたマイケル）はドッグレースにハマり、ボスの4万元を失って退職。絶望的な状況な中、路上でハッタリをかけて詐欺を働いたが、その正体が暴かれてしまう。　――多謝、維基百科（Wikipedia）＆Google翻訳様。

　カジノのシーンでは日本人ツアー客が登場するのだが、皆トイレットペーパーを山ほど抱えている。オイルショックをきっかけに日本各地でトイレットペーパーの買占め騒動が起こったのが73年（昭和48年）末のことらしいので、ちょうど撮影時期だったのかしらん。

　今作にはマイケルの実弟・許冠英（リッキー・ホイ）もちょこっと出演している。
　部屋で傑美芳がふと窓の外を見ると、リッキー演じる男が美女のいる上の部屋から真っ赤な下着を物干し竿で盗んでいた。盗んだ下着の匂いを嗅いだり噛み付いたりと、暫し喜びに浸る男。だがすぐにババァが下着がないことに気付き、自分の下着がないと喚きだしたため、男は陰で吐き気を催すのであった。嗚呼、可哀想なリッキー…。これだけのシーンなんだけど、ちょっと嬉しい。
　あと、江朗がハッタリをかました相手を演じているのは、監督の李翰祥（リー・ハンシャン）だったりする。

　美人局の余娟娟を体当たりで演じている白小曼は李翰祥監督が発掘した新人で、当時18歳。
美しくて小悪魔的で、ヌードシーンも大胆に演じている彼女は、映画公開前に自殺してしまい、デビュー作が遺作となってしまった。彼女が母親に宛てた遺書にはこう書かれていた。
　「媽：我永遠的愛您！我吃了好多！我開始了！可是我要喊，我死也不安樂。我要叫出来！媽！我好苦哦！」――お母さん、永遠に愛してる！…お母さん、私はとても惨めだわ！――
　映画は予定通り公開され、彼女の死は予想外の宣伝効果をもたらし、この映画は大ヒットしただけでなく評判も良かった。誰もが彼女の自然な演技を賞賛し、観客に温かく迎えられたという。

　　　
　（中央の画像の女性が白小曼、右の画像の厳つい眼鏡の男性が李翰祥監督）

　聲色犬馬　Sinful Confession　1974年8月16日（香港）
　監製 ： 邵仁枚　導演 ： 李翰祥　編劇 ： 李翰祥　
　制片商 ： 邵氏兄弟公司（Shaw Brothers）ショウ・ブラザーズ
　演員 ： 許冠文、胡錦、白小曼、谷峰、張沖、胡茵茵、沈勞、王琛、馮敬文、許冠英
　票房 ： HK$ 2,105,822（1974年第3位）