Pastime Paradise

　「Mr.Boo! マイケル・ホイ（許冠文）祭」第5夜の今宵は、邵氏兄弟公司（ショウ・ブラザーズ）との最後の作品である「醜聞」を取り上げたい。最後とは言ってもこの作品の公開が74年4月、第4夜で御紹介した「聲色犬馬」が同年8月公開なので、紹介の順番をうっかり間違えてしまった。…ま、どっちでもいっか。
　個人的にはこの作品のマイケルが一番格好いいと思っている。この頃はまだシュッとしているので長袍や人民服がよく似合っているし、眼鏡も掛けていないので、やたらと喋る面白二枚目半俳優という感じ。
　私はフェミニストではないが、女性の裸が出ないので見やすいし。

　河北省万平県では県長から各局長に至るまで、汚職、詐欺、色恋問題…と醜聞（スキャンダル）が蔓延している。そこに暮らす浮浪者のマイケル演じる甄明と王琛演じる賈亮。
　ある夜、県府に忍び込んだ二人は執務室で飾られている県長夫妻の写真を見てビックリ。県長と賈亮は瓜二つだった。金庫を開けてみるとお金はなかったが、各局長達の醜聞を記録した手帳が何冊もあった。そこへ誰かがやって来たため慌てて隠れる二人。井淼演じる錢財政局長と、恬妮（ティエン・ニー）演じる県長の妻・潘巧環は二人が隠れて覗いていることにも気付かずムフフのフ。一方その時、県長（これも王琛）達は階下のホールで集会を開いていたが群衆が暴動を起こしたため、県長と秘書長は慌てて2階に逃げ込んだものの、秘書長は群衆に殴り殺され、県長も意識を失う。群衆が去った後、賈亮は県長の服を着て彼になりすまし、甄明は県長の親友のふりをして警官に意識不明の本物の県長と秘書長の遺体を運ばせた。
　朱牧演じる周警察署長が警官達を引き連れて到着すると、甄明は成りすましが発覚することを恐れて、金庫から盗んだ不祥事の記録を持ち出して脅迫した。周は露呈することに恐れをなして協力を約束し、顧峰演じる呉衛生所長、王憾塵演じる鄭工務局長、郝履仁演じる王教育局長等を紹介。さらに周は李麗麗（リリー・リー）演じる周の妹・周申錦を賈亮に秘書として差し出した。そして潘巧環も錢局長との関係を理由に甄明に捕らえられ、県長夫人の地位を守るためには、賈良が県長であることを認めざるを得なくなった。
　事件翌日、県内で暴動が発生したため馮省長（これもマイケル）が視察に来た。秘書長として甄明は歓迎の手配をし、万平県を平和な雰囲気に整えた。馮省長は県内に不祥事が多いことを知りながらも特に調査はせず、代わりに姜南演じる侍従長が仲裁して県長や各局長に多額の賄賂を贈るよう依頼。そのうえ、馮省長は潘巧環をも手に入れてゴキゲン。
　そこへ、回復した本物の県長が錢局長とともに県府に乗り込んで来た。しかし局長達や潘巧環、寝返った錢局長は事実を認めようとせず、呉局長ただ一人だけが彼が本物であると言い張った。馮省長は激怒し、本物の県長と呉局長を処刑するよう命じた。憤怒の形相で詰め寄る本物の県長に怯える賈亮。
　……と、賈亮は甄明に叩き起こさる。これらは全て路上で寝ていた賈亮の夢だったのだ。そして銀行強盗事件が起こり、甄明たちの方へ逃げてきた犯人達は急いで身に着けていた覆面と衣服を脱ぎ捨てた。一部始終を目撃した甄明と賈亮は、衣服を脱ぎ捨てて正体を現した警官達に頭から袋を被せられ、彼らに連行されるのであった。―― 多謝、開眼電影網様。

　人生とはドラマのようなものであるというブラックユーモアを前面に押し出しつつ、私腹を肥やそうとする役人らの恥知らずな行為を厳しく非難している――と維基百科（Wikipedia）で紹介されているが、古今東西汚職が蔓延る世の中なので普遍的な題材といえるかな、興行成績は今ひとつだったようだけど。
　台湾の金馬奨（Golden Horse Awards）で65年、68年と2度も最佳男配角（最優秀助演男優賞）を受賞している井淼（チン・ミャオ）が錢局長を演じているものの、出番は少なめ。

　丸坊主で頬髭もじゃもじゃの馮省長は置いといて、浮浪者＆秘書長の甄明を演じているマイケルが若々しくて本当に格好いい。喜劇王という観点からだと物足りないとは思うが、おそらく二枚目度は今作が一番である。まぁマイケルにイケメン度合いを求める人が果たして私以外にいるのかどうかは分からないけど…

　　　

　醜聞　Scandal　1974年4月12日（香港）
　監製 ： 邵逸夫　導演 ： 李翰祥　編劇 ： 李翰祥　
　制片商 ： 邵氏兄弟公司（Shaw Brothers）ショウ・ブラザーズ
　演員 ： 許冠文、王琛、恬妮、朱牧、井淼、顧峰、李麗麗、王憾塵、郝履仁
　語言 ： 国語（中国語）
　票房 ： HK$ 1,233,116（1974年第16位）