カテゴリ:許冠文&Mr.Boo!
「Mr.Boo! マイケル・ホイ(許冠文)祭」第8夜の今宵は、76年に公開されて大ヒットしたマイケルの監督・脚本・主演作第3弾「半斤八兩」を御紹介。何でも香港における70年代の興行収入記録第1位だそうな。 日本では元々78年公開の李小龍(ブルース・リー)主演映画「死亡遊戯」の配給権のオマケでついてきた作品だったが、79年2月に穴埋めとして「Mr.Boo! ミスター・ブー」の邦題で公開したところ予想外にヒットしたため、他のホイ兄弟作品も急遽配給することにしたという。しっかり練られたストーリー、くだらない(褒め言葉)ギャグの数々、哀しくも可笑しく逞しい市井の人々の姿。全てが馬鹿馬鹿しくて素晴らしい。マイケル監督作品の中ではこの「半斤八兩」がやはり最も優れていると思う。日本で最初に公開されたホイ兄弟映画がたまたまこの作品で本当によかった。もし「鬼馬雙星(ギャンブル大将)」が先に公開されていたら、日本でMr.Boo!ブームが起こることは決してなかっただろう。 マイケル演じる黃若思(黃)は萬能私家偵探社を営むケチな私立探偵で、リッキー(許冠英)演じる助手の雞泡と、趙雅芝(テレサ・チュウ)演じる秘書の積琪を雇っている。浮気調査でクラブに入店した黃は、呉耀漢(リチャード・ン)演じる警長率いる警官隊に踏み込まれて捕まったりながらも、依頼人の朱さんと浮気現場に乗り込んで証拠写真の撮影に成功。 その頃、ジュース工場で働くサム(許冠傑)演じる李國傑(傑)は、同僚の女の子にいい所を見せようと仕事そっちのけで得意のカンフー技を披露していたら、上司に見つかりクビになってしまう。 傑は萬能私家偵探社を訪れ、黃に雇ってほしいと頼むが断られる。しかし陳劍雲演じる男に財布を掏られた黃が犯人を追うも捕まえ損ねてしまったのを、傑が一瞬で財布を取り戻してくれたため、月給500ドル(住込みで食費は1食2ドルというドケチっぷり)で雇用決定。だがその財布は犯人のもので、黃の財布はポケットにしまってあった。今度は男が呼んだ警長らに追われる黃と傑。探偵事務所に逃げ込み、追ってきた警長らから逃れるためにビルの窓から縄梯子で外へ。梯子が外れるも何とか別階の窓台で一息付いている二人を、ちょうどその窓の内側で現場検証をしていた警長と男に見つかってしまう。 続いての仕事はTVと冷蔵庫を月賦で購入し、1回だけ払って住所変更した男(演じているのは郭利民)を尾行し、支払ってもらうこと。黃は修理屋に成りすまして男の部屋に入るが、そこは空手だかの道場で、偽者だとバレた黃はボコボコにされながらも何とか任務終了。 ある日、事務所に映画館オーナーの陳マネージャーが依頼に訪れる。金を払わないと爆破するとの脅迫文と爆弾が座席に置いてあったとのこと。爆弾が本物か試してみると本当に爆発したため、雞泡に調べるよう命じ、黃と傑はスーパーの女性オーナー・莫さんからの依頼で万引犯を捕まえにスーパーへ。すると妊婦のふりをしてお腹に次々と商品を隠す女と、黃哈演じる連れの男を発見。レジでこっそり監視していた黃がトイレットペーパーだけレジに出した女に万引商品込みの代金を請求したところ、逃げ出そうとした男の方を傑が追い、五獣拳を繰り出す男を簡単にやっつけた。 周夫人の浮気調査(相手は何と警長!)に出かけた黃と傑は、二人を追ってラブホテルへ。ホイ兄弟の次男である許冠武(スタンリー・ホイ)演じる受付係にホモと勘違いされた二人は、ウォーターベッドの部屋に案内される。傑が一人で周夫人達の部屋に忍び込んで証拠写真を撮っている間、黃は合鍵を放り投げてベッドで熟睡。泡風呂に逃げ込んで見つかりはしたものの何とか逃げ帰った傑がずぶ濡れで部屋に戻ってみると、鍵の上に寝ていた黃も穴の開いたベッドでずぶ濡れになりながら眠り込んでいた。 曾楚霖演じる爆弾魔がまたしても爆弾を持ち込んでいることに気付いた映画館の従業員が陳マネージャーに知らせ、陳さんは早速黃に連絡。爆弾魔の近くに席を取った陳さん、黃と傑。映画の途中で爆弾魔が席を立ったため、黃は跡を付けるよう傑に合図する。爆弾魔が外のトイレに爆弾を仕掛けているのを見つける傑。だがその頃、中では石堅(シー・キエン)演じる九叔率いる強盗団が客全員から実に奇抜な方法で所持品を巻き上げていた――。 今までチョイ役ばかりだったリッキーにもめでたく役が付き、おまけに普段は裏方仕事に徹している次男のスタンリーも特別出演していて嬉しいかぎり。 とても分かりやすいギャグが随所に盛り込まれており、TVの料理番組を流しながら鶏料理をしていた黃が、いつの間にか体操番組に変えられていたことに気付かず、鶏の首をぐりぐり回したり、鶏を持ったまま寝転んで上体を起こしたりするシーンは伝説級の面白さだ。他にも、財布を掏った男が逃げ込んだ厨房で鮫の顎を持ち出した(BGMは “Jaws(ジョーズ)”)のに対抗して、黃がソーセージをヌンチャク代わりに戦う(BGMは勿論 “龍爭虎鬥(燃えよドラゴン)”)シーンやら、周夫人の浮気現場を押さえるために、運転の出来ない傑が車をガンガン壊しながら追跡するシーン等々、馬鹿馬鹿しいシーンがてんこもり! スーパーで五獣拳を披露した黃哈(ウォン・ハー)といえば、この作品で武術指導を担当している洪金寶(サモ・ハン・キンポー)のスタントチーム・洪家班の一員だったこともある方だ。個人的には「殭屍先生(霊幻道士)」(サモ製作、リッキー出演の大ヒットキョンシー映画。85年公開)の任老爺役が一番印象深いのだが、昨年3月に逝去された。 でもってお間抜けな強盗団のボス・九叔を演じた石堅(シー・キエン)のおバカ演技も最高! 「龍爭虎鬥」で鉄の爪・韓(ハン)を演じた方と同じとは思えぬバカっぷり。流石である。 今回音楽を担当したのはサムと、彼のバンド・蓮花樂隊(Lotus)。主題歌の “半斤八兩” がこれまた素晴らしく、日本で初めて販売された広東語歌謡曲らしい…知らんけど。赤塚不二夫作詞の共作版も発売されたのだとか。そういえば映画のパンフレットには赤塚先生の解説が載っている。ホイ兄弟を香港のマルクス兄弟と書いてたっけ。 ♪我哋呢班打工仔 通街走糴直頭係壞腸胃 搵嗰些少到月底點夠洗(奀過鬼) 確係認真濕滯~ (オレたちは貧しい労働者 働きづめでクタクタだ 給料はスズメの涙 本当にツライよ~) この作品は香港電影金像獎協會が選ぶ「最佳華語片一百部 The Best 100 Chinese Motion Pictures」(中国映画歴代ベスト100)の13位に選ばれている 香港の様々な映画人が選出したものなのだが、1位は「小城之春(田舎町の春)」(導演:費穆。48年公開)、2位は「英雄本色(男たちの挽歌)」(導演:吳宇森。86年)、3位が「阿飛正傳(欲望の翼)」(導演:王家衛。90年)。3位がコレの時点でどうも素直に喜べない… (真ん中の画像、向かって左から長男マイケル、四男サム、次男スタンリー) 半斤八兩 The Private Eyes 1976年12月16日(香港) 邦題 : Mr.Boo! ミスター・ブー 日本公開 : 1979年2月3日 監製 : 鄒文懷 導演 : 許冠文 編劇 : 許冠文 策劃 : 吳宇森、薛志雄 武術指導 : 洪金寶 制片商 : 嘉禾電影有限公司(Golden Harvest)、許氏影業有限公司(Hui's Film Production) 演員 : 許冠文、許冠傑、許冠英、趙雅芝、吳耀漢、石堅、盧慧芝、朱牧、曾楚霖、蕭欽芳、黎少芳、黃哈、陳劍雲、張俊英、許冠武 音樂 : 許冠傑、蓮花樂隊 語言 : 粵語(広東語) 票房 : HK$ 8,531,699(1976年第1位) Mr.BOO! 広川太一郎 吹替伝説・ミスター・ブー : 広川太一郎氏の懐かしい吹替面白台詞集 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023.09.01 19:32:57
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