Pastime Paradise

　「Mr.Boo! マイケル・ホイ（許冠文）祭」も今宵で第10夜。
本日9月3日はマイケルの81回目の誕生日である。生日快樂～
　このおめでたい日に御紹介するのは、マイケルの監督・脚本・主演作第5弾にして、81年の旧正月に公開されるや香港の興行収入記録を打ち破った大ヒット作「摩登保鑣」である。
　日本では「新Mr.Boo! アヒルの警備保障」の邦題で82年1月に公開された。前作から3年経ったからか、80年代に入ったからか、何故か “新” が付くようになった。
　数あるマイケル作品の中で、私は「摩登保鑣」を最も愛している

　王氏護衛局（警備会社）に勤めるマイケル演じる周世昌は、間もなく勤続15年を迎える鬼隊長。ちょっと間抜けなところもあるが部下には厳しく、威張り放題やりたい放題。デパートの警備では、サム（許冠傑）演じる副隊長・阿Samに万引犯を演じさせ、彼を取り押さえる所をアピールしてこの店の警備員は強い！と思わせるセコい作戦を行っている。
　ある日、ホイ兄弟の実父・許世昌演じる王社長がスイスで白内障の手術を受けることになり、馮淬帆（フォン・ツイファン）演じる英国留学帰りの息子・王平帆（阿帆）にすぐさま跡を継がせようとするが、阿帆は暫く身分を隠して皆の仕事ぶりを見たいという。
　王氏護衛局の新入隊員応募の試験（身体測定）が行われ、阿帆は難なく合格。続いてリッキー（許冠英）演じる鄧小龍が阿Samの元に体重を量りにやって来た。この小龍、前に別の警備会社で試験を受けた際、色盲と低身長で落とされていた。なので今回は対策として空缶を足裏に付けて挑んでいるのだが、あっさり阿Samにバレ、左足の缶を蹴飛ばされる。身長測定担当の世昌も小龍の妙な歩き方に気付き、右の缶も蹴飛ばして失格を言い渡すも、小龍の煽てに乗せられて合格にしてしまう。
　合格した新入隊員達に対する世昌鬼隊長による講義が始まった。センサー付電子マットの説明をするため、世昌がマットを出入口に敷いて電線を手に持っているところに、遅れてきた小龍がマットを踏んだため世昌に電気がビリビリ。続いて、ビル火災では屋上に逃げてパラシュートで脱出するという。翌日の実地訓練では試しにパラシュートを付けた人形を落としてみるが、下でマットを持って待ち構える世昌や阿帆が追いつけず、人形はバラバラに…。他にも運転免許取得訓練で世昌の言葉のリズムに合わせて机で運転練習をしたり、散弾銃の撃ち方練習（自分は実弾、新人には空弾）をしてみたり。護身術訓練では、敵に銃を向けられたら銃口に指を突っ込めとのこと。弾が逆戻りして暴発して敵が吹っ飛ぶという。新人達がバカにするため、世昌は阿帆に銃を構え、小龍に指を入れろと命令。いざ撃ってみると本当に小龍の指は無事で、阿帆は顔を煤だらけにして後ろに吹っ飛んだ。
　世昌は阿Sam、小龍、新参のふりをしている阿帆を車に乗せて、現金を銀行まで護送する任務に出た。阿Samと小龍が銀行員とやり取りしている間に強盗事件が発生。阿Samと小龍、加勢した阿帆は逃げた犯人を追い詰めて確保したが、世昌だけは車に残って会社に連絡するふりをしていた。
　阿Samは隊長となり、小龍も平隊員から昇格した。王社長はスイスへ行くことになり、新社長として阿帆が紹介された。世昌はすぐさま阿帆に社長室に呼び入れられ、やり方が古いと平隊員に降格させられる。隊員達に自分は遅れているのかと尋ねると、時代遅れの嫌われ者だと小龍にはっきり言われてしまう。そして平になった世昌はデパートで犯人役を務めるも、阿Sam達が駆け付ける前に店員に痛めつけられてしまい、両腕にギプスをする羽目に。
　阿Sam、小龍、世昌の3人は船上パーティーの警備に付く。船に乗り込んでいた密航者を発見して海に戻した後、阿Samと世昌がいない隙に小龍がまたしても密航者家族を見つけてしまう。黃造時演じる長女・阿珍に一目惚れした小龍は、彼らを隠して食料を届けるが、世昌と阿Samにも見つかってしまう。船のオーナー達にバレそうになるが、3人はシラを切って密航者家族を匿った。
　後日、阿珍は小龍ら3人を家に招待し、小龍と阿珍の仲は深まっていく。ある夜、3人がホテルでの警備中、粧し込んだ阿珍が男と一緒にいるところを見た小龍は部屋に乗り込むが、男に殴られてしまう。男は何もせずに帰っていき、追ってきた阿Samらが阿珍に理由を尋ねると、母親が5万ドル借金しているとのことだった。
　とある任務中、車に残っていた世昌が女性に気を取られて僅かに車から離れた隙に強盗団が乗り込み、知らずに戻ってきた阿Samと小龍が乗車すると、銃で脅された。阿Samが銃口に指を突っ込んだため、撃った強盗はまんまと後ろに吹っ飛び、金庫を持って逃走。慌てて3人も追うが、小龍は犯人が投げ捨てた金庫の金を戻しながらふと、阿珍の言葉を思い出して5万ドルをくすねてしまう。
　小龍は阿珍に5万ドルを渡すことが出来、二人で夜道を歩いていたところを強盗団に連れ去られた。翌日の古物展覧會で金縷玉衣を盗むため、5分間だけ警報装置を切れという。小龍は仲間を裏切れないと断るが、阿珍が人質に捕らえられているため従うしかなかった。
　そして翌日。古物展覧會を開催している50階で警報が鳴り、阿Samと世昌が駆け付けると同階の日本食レストランに潜んでいた強盗団を見つける。数で適わない世昌達は古物展覧會場に逃げ込むが、世昌が隊長だった頃に設置した万全のセキュリティシステム（常に2台のカメラが監視していて異常を知らせる）が作動せず、小龍に助けを求めても反応が無い。ここで世昌と阿Samは小龍が強盗団とグルだと気付くも――。

　古物展覧會のドアを開けるには暗証番号と声紋照合が必要で、この暗証番号がやたら長く、全て押すと “Happy Birthday” のメロディになるのだ♪ 改めてお誕生日おめでとう、マイケル！

　この作品には長男・マイケル、三男・リッキー、四男・サムの他に、彼らの実父・許世昌氏も社長役で出演。そして次男・スタンリー（許冠武）も執行導演（Exective Director）を務めている。マイケルの今回の役名・周世昌が、お父さんと同じ名前なのも素敵だ。

　嫌味な鬼隊長から小龍を救う心優しい隊長まで様々な演技を見せてくれたマイケルは、82年3月に開催された第1屆香港電影金像獎（第1回香港電影金像賞）で、栄えある初代の最佳男主角（最優秀主演男優賞）を受賞　しかし当時のマイケルは金像獎に否定的というか、芸術は競い合うことではないと思っていたようで、授賞式にはリッキーが代理で出席したそうな。

　今まで出番の少なかったリッキーが大活躍するこの作品、リッキーをメインに据えることでサムの格好良さやマイケルの芸達者ぶりが引き立ち、今までで一番面白く仕上がっているように思う。リッキーがとぼけた弟子役を演じた「殭屍先生（霊幻道士）」(85)も最高に面白かったし。
本当に皆から愛されてるよね、リッキー。

　「鬼馬雙星」では採石場でマイケル演じる鄧國文に賭けで負けて昼食を巻き上げられる囚人役、「天才與白痴」では緑の帽子を被っている統合失調症の患者役、「半斤八兩」では映画館に爆弾を仕掛ける爆弾魔役を演じた曾楚霖（チャン・チョーラム）。今回は万寿葬儀場に安置されている大金持ちの死体からプラチナの腎臓を盗もうとした盗賊団の一味で、警備する世昌達を誤魔化すため死体になりすましていた老人役でちょこっと出演。この後はマイケル作品に出てこないのでちょっぴり寂しいような…。

　パンフレットによると、古物展覧會に展示されていた翡翠の鎧は本物だそうで、国宝級の値打ちなのだとか!?

　　
　（真ん中の画像、眼帯を付けているのがホイ兄弟のお父さん・許世昌氏）

　摩登保鑣　Security Unlimited　1981年1月30日（香港）
　邦題 ： Mr.Boo! アヒルの警備保障　日本公開 ： 1982年1月16日
　監製 ： 鄒文懷　導演 ： 許冠文　編劇 ： 許冠文、許冠傑
　執行導演 ： 許冠武　策劃 ： 何冠昌　武術指導 ： 陳會毅
　故事 ： 許冠文、許冠傑、鄧偉雄、葉富強
　制片商 ： 嘉禾電影有限公司（Golden Harvest）、許氏影業有限公司（Hui's Film Production）
　演員 ： 許冠文、許冠傑、許冠英、黃造時、馮淬帆、許世昌、陳星、李海生、張俊英、郭利民、曾楚霖、董驃
　音樂 ： 許冠傑
　語言 ： 粵語（広東語）
　票房 ： HK$ 17,769,048（1981年第1位）

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