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2023.09.10
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カテゴリ:許冠文&Mr.Boo!
 「Mr.Boo! マイケル・ホイ(許冠文)祭」も既に第13夜。今宵は85年に公開された「智勇三寶」を御紹介。日本では劇場未公開だったがビデオ化はされていて、邦題は「帰ってきたMr.Boo! ニッポン勇み足」。

 それまで広川太一郎さんの吹替でしか見たことがなかったマイケルを今作で初めて字幕で見て、そのスマートで知的な声と喋りに衝撃を受けた。それ以降、マイケルがどれだけバカ演技をしていようと、知的で素敵な男性としか見れなくなってしまった。勿論おバカに徹するマイケルも大好きだけど。

 さて、この “帰ってきたMr.Boo!”、 英題を「Mr. Boo Meets Pom Pom」という。
 この作品は83年に大ヒットした洪金寶(サモ・ハン・キンポー)監督・脚本・主演作品「奇諜妙計五福星」(五福星)で “死氣喉(排気管)” を演じた吳耀漢(リチャード・ン)と “鬈毛積(モジャ)” を演じた岑建勳(ジョン・シャム)の二人が主演した、「五福星」のクロスオーバー作品「神勇雙響炮(英題:Pom Pom。邦題:新ポリス・ストーリー Pom Pom)」(84年公開)にマイケルが参加したもの。英題の “Mr.Boo” は、日本でマイケル=Mr.Booということが、本国でも認知されているのだろう。
 ちなみに、この作品の製作は德寶電影公司(D&B Films)で、嘉禾(ゴールデン・ハーベスト)以外の作品にマイケルが出演するのは、ホイ兄弟で映画を撮り始めて以来初めてのことである。

 香港の松田銀行に強盗団が客を人質に取り立てこもった。直ちに警察が包囲し、陳欣健(フィリップ・チャン)演じる陳Sirは、早速吳耀漢演じる吳阿秋と、岑建勳演じる貝多芬を現場に呼び出す。自力で脱出した行員によると、金庫内に支店長と強盗団の一人が閉じ込められているとのことで、マイケル演じる科学犯罪捜査課の專家文も呼ぶことに。秋と芬のおかげで強盗団は捕まり、人質も全員解放。金庫は文の的確な指示で無事に開けることが出来たため、取材陣が文に殺到。芬は素直に文を尊敬するが、秋は面白くなかった。
 ある日、翁世傑(スチュアート・オング)演じる(Charlie)の経営する宝石店に強盗が押し込み、持参した手斧でガラスを割って盗もうとするが、店員は特殊ガラスだから割れないとせせら笑う。強盗が諦めようとしたとき、店員が当たって金属燭台が棚から落ちた。すると何故か次々とガラスがひび割れ、強盗は宝石をカバンに詰めて逃走した。
 警察を訪れた楊から、特注品であるスペースシャトル用の特殊ガラスが何故割れたのか調査を依頼された陳Sirは、秋と芬に解決を命じる。車を出そうと二人が駐車場に向かうと、車の前に別の車が駐まっていて動かせない。その車の助手席にいる胡茵夢演じる杜白莉に車をどかすよう頼むも、相手にされない。車は楊のもので、お高く留まっている美人の彼女は楊の恋人であった。
 ガラスの問題解決の糸口を見出せない二人だったが、芬が文にお願いしようと言い出し、文に電話して高級店で奢ることを条件に協力の約束を取り付けた。一方、文はその日が結婚5周年の記念日だったため、ご馳走を作って妻を待っていたが、帰宅した妻・杜白莉はおばと麻雀会に出掛けると言い、記念日にも料理にも一切興味を示さなかった。
 高級店でガラスを見た文はシャトル用の特殊ガラスだと一目で見抜き、音による振動が唯一の弱点だと言って、毎秒18万6千回振動する音叉を鳴らして実際に割って見せた。グラスが割れないのは?と尋ねる芬に、共鳴する波長が違うからだと説明して文が追加オーダーをしていると、楊と杜白莉が来店。秋と芬は「楊は他人の女房に手を出したがる」だの「可哀想な亭主の顔が見たい」だの言いたい放題。楊と杜白莉の仲睦まじい様子を目撃してしまった文は席を外し、トイレの鏡に向かってあれは妻じゃない、妻じゃない!と自分に言い聞かせる。そうしていると眼鏡がひび割れたため、文が席に戻ってみると芬が音叉を鳴らしており、店中のガラスが割れまくってしまった。
 帰宅してからも妻を信じたい気持ちと疑う気持ちで揺れ動く文が確認のためおばに電話してみると、おばは外国旅行に出たとのこと。それでもまだ半信半疑の文だったが、酔って帰宅した妻が「愛してるわ、Charlie」と口にしたため、浮気を確信する。
 文は楊が駐車しようとしているところへ愛車のおんぼろバイクを駐めると、運転席の楊に妻との写真を見せながら「ここは自分の止める場所だから以後止めるな」と警告するも、楊は文を無視したうえにバイクを壊して駐車し、「もう俺のものだ」と写真を投げ捨てた。怒った文が楊に掴みかかるが、通り掛かった芬に止められる。楊は一緒にいた秋に文に乱暴されたと訴えるも、秋は見てないと答え、代りに器物損壊罪で出頭しろという。弁護士に言えと出頭拒否した楊に秋は証拠品押収だとして車の外側(モノコック?)をクレーンで押収。溜飲を下げた文は、秋と芬に食事を奢ることに。
 その夜、文が正装した秋と芬を連れてきたのは安い食堂だった。芬が秋は葉德嫻(デニー・イップ)演じる奥さんの安娜に尻に引かれているとバラすと、文が夫は亭主関白であるべきだと諭す。帰り道、3人の乗る車が楊の運転する車とぶつかってしまい、助手席にいる杜白莉を目にした文は家に帰りたいと言い出した。文を送ったついでに家に上がった二人はお茶の用意を自らしようとする文に、奥さんは?と尋ねる。妻が不倫しているとバレたくない文は、妻を痛めつける演技をして誤魔化すが、二人からは文の一人芝居の一部始終が見えていた。そこに杜白莉が帰宅したため、二人はビックリ!杜白莉は荷物をまとめて家を出ていってしまった。
 後日、楊の宝石店に展示してある珊瑚にローストダックが置かれてあった。捜査に来た秋と芬は、横でローストダックを齧りながら指示を出す文を見て、文の仕業だと気付く。文が芬を連れて帰宅すると、家の前に近所の主婦達が離婚記念にアヒル進呈と書かれたカードを持って集まっていた。文が家のドアを開けると、家中がアヒルだらけに。そんな中、杜白莉がパスポートを取りに戻ってきた。彼女が頭を冷やしに日本に行くと言ったため、文と芬も彼女達を追って日本へ――。

 德寶電影公司(D&B)は84年に設立された映画会社で、実業家の潘廸生(ディクソン・プーン)氏が映画会社を設立したいと友人である岑建勳に相談を持ちかけ、映画界の大アニキである洪金寶も共同出資者として加わって出来た会社だ。株式保有割合は潘廸生60%、洪金寶25%、岑建勳15%だったそうな。しかし何だかんだで92年に結業。
 なのでこの作品は監製(Exective Producer)は洪金寶、動作設計(Action Choreographer)も洪家班が務めている。陳龍(ピーター・チャン)、鍾發(チョン・ファッ)、錢嘉樂(チン・カーロッ)、陳會毅(ビリー・チャン)などの洪家班メンバーが出演していたりする。でもって導演(Director)の午馬(ウー・マ)も勿論出演。
 さらに前作「鐵板燒」でぷるぷる震えてる103歳のじーさんを演じた許英秀(ホイ・インサウ)が、今作にも人質の一人として出演しているのが嬉しい。

 マイケル監督作第3弾「半斤八兩」でも警官役で大活躍した吳耀漢(リチャード・ン)は、今年4月に心停止により83歳で亡くなった。午馬も既に鬼籍に入られてるし…寂しいなぁ。

 86年4月開催の第5屆香港電影金像獎では、マイケルが最佳男主角(最優秀主演男優賞)にまたしてもノミネートされた。一方、安娜役を演じている葉德嫻は違う作品(「花街時代」)でだが最佳女配角(最優秀助演女優賞)を受賞。
 前作とはまた違う恐妻家を演じたマイケルが実に健気であり、且つ有能で知的な役柄でもあるので、惚れずにはいられない…まぁおバカは相変わらずだけど。個人的にはかなりのオススメ作だ。

   

 智勇三寶 Mr. Boo Meets Pom Pom 1985年3月9日(香港)
 邦題 : 帰ってきたMr.Boo! ニッポン勇み足 
 監製 : 洪金寶 導演 : 午馬 編劇 : 陳偉儀
 制片商 : 德寶電影有限公司(D&B Films)
 演員 : 許冠文吳耀漢岑建勳胡茵夢翁世傑陳欣健葉德嫻午馬陳百祥
 音樂 : 鄧少林
 語言 : 粵語(広東語)
 票房 : HK$ 17,089,402(1985年第7位)





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Last updated  2023.10.02 03:26:50
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