カテゴリ:許冠文&Mr.Boo!
「Mr.Boo! マイケル・ホイ(許冠文)祭」第18夜の今宵は、90年に公開された「新半斤八兩」を御紹介。今作は76年公開の大ヒット作「半斤八兩」のセルフ・リメイク作品で、英題の「Front Page」は「歡樂叮噹」と同じくビリー・ワイルダー(Billy Wilder)監督の「フロント・ページ(The Front Page)」へのオマージュかな。邦題も「フロント・ページ」だ。
ホイ兄弟の長男・マイケル、三男・リッキー(許冠英)、四男・サム(許冠傑)の3人が揃って出演するのは81年の「摩登保鑣」以来9年ぶりであり(「雞同鴨講」のゲスト出演は除外)、おまけに次男・スタンリー(許冠武)も久々にチラリと出演。ホイ4兄弟が揃っての出演も「半斤八兩」以来で、4兄弟共演は彼らの父親の希望によるらしい。そのお父さんも「摩登保鑣」では警備会社社長役で共演している。 マイケルは出品人・プロデューサー・脚本・主演をこなしており、監督・脚本は「神探朱古力」と同じく陳欣健(フィリップ・チャン)が務めている。陳欣健の監督も悪くはないが、兄弟共演作はやはりマイケルに監督してほしかったなぁ。 シリアス且つ時代遅れな内容で発行部数が低迷している週刊誌「内幕」。マイケル演じる「内幕」出版社オーナー兼編集長・老許の元へ、毛舜筠(テレサ・モウ)演じる広告代理店の何雅祺が訪れて広告を引き上げるという。 従業員であるリッキー(許冠英)演じる烏蠅や葉榮祖演じる錦叔が安月給に文句を言うので、老許はすぐに就職希望者が来るはずだとドアを開けて「月給6,000ドル、サボリ放題」と大声で言った途端、ちょうど出版社と同じフロアにある格闘技場で袁信義演じる師傅(師匠)からクビを言い渡されていたサム(許冠傑)演じる指導員の喪標が本当にやって来た。喪標が提示する月給額に老許が断りを入れていた時、批評でけなした映画のスタントマン達が武器を持って怒鳴り込んできた。喪標が彼らを鮮やかに追い払ったため、老許は雇い入れることに。 壁に飾ってある「内幕」の表紙を見た喪標は、“香港と基本原則” や “マルコス夫人” など論外で、“愛犬と梅芳芳” などという下らない特集記事ではなく、梅芳芳がロケで幽霊を見た話は有名なので “幽霊と梅芳芳” がいいと言う。幽霊は実在しないと言う老許に、それを決めるのは俺達だと言い放つ。そこへ銀行員の梁主任が訪れ、借入金の払込が4回分滞っており、このままでは抵当流れになるとのこと。何とか泣きついて返済まで1ヶ月の猶予をもらったが、梁主任が帰り際に壁を見ながら「梅芳芳が幽霊を見た話は有名なのに “犬と梅芳芳” の特集…困ったものだ」と嘆いたので、次号で再特集して写真を載せると口走ってしまう。 夜、梅芳芳の撮影現場へ出向き、本人取材する喪標と烏蠅。その後の撮影中に女幽霊が現れて現場は騒然。撮影隊は逃げ去り、幽霊に扮していた老許がほっと一息ついていると、まさかの幽霊に遭遇。実は梅芳芳が見た幽霊というのは劉兆銘演じる順哥率いる強盗団の仕業で、老許の前にいる幽霊はその一員なのだが、そうとは知らない老許は恐怖のあまり降り出した大雨が溜まった穴に落ち、助けに来た喪標と烏蠅は幽霊を写したカメラを穴に落として台無しに。 支払期日が2週間後に迫り、銀行からの差押を回避すべく早く次号を出さねば…と焦る老許。喪標は、宝石商の息子と婚約した今話題の清純派女優・洪欣演じる張珊珊が豊胸手術のため通院している現場写真を撮ろうと提案。早速老許と喪標は珊珊を追って病院へ入り、老許が秦沛(チョン・プイ)演じる美容整形医・龐医師に整形相談をしている間に喪標が手術証拠を掴もうとしたが、彼女は美顔マッサージを受けただけだった。 珊珊が毎週教会に通って懺悔していると女性社員から聞いた老許、喪標、烏蠅の3人は日曜日に教会へ行き、喪標が神父に成りすまして珊珊の懺悔を聞く。子供の頃に父が死に、母は腎臓病を患っており、弟には知能障害があるとのことで、自分だけでは養えず、そのうえ母の治療費や弟の米国特殊学校の費用を婚約者の李羅拔が出してくれているため、恩に報いるには結婚しかないと告解。婚約者を愛していないと知った喪標は特ダネだというが、老許は恋人がいて結婚前に逢引という記事なら大当たりだと。そこで喪標が盲人の占い師に成りすまして珊珊の車にぶつかったフリをして家に招き入れ、夫が死んで以来喋れなくなった車椅子の老母に扮した烏蠅と知恵遅れの少年に扮した老許の二人が、何とか珊珊と喪標の密着写真の撮影に成功。彼らを疑いもしない珊珊は、換金すれば母の治療代と弟の特殊学級費用になると、自身の高級腕時計を喪標に手渡す。 珊珊の真心に触れた喪標は、大スキャンダルが撮れて喜ぶ老許が印刷所を押さえる手配をしている隙に、烏蠅の協力のもと写真とネガを持って珊珊の婚約発表パーティー会場へ急ぐ。裏で沈んだ顔をしている珊珊に喪標は正体を明かし、燃やしてくれと写真一式を渡す。しかし追ってきた老許がそれを横取りしたため、取り戻そうとする喪標と老許が揉みあって会場に出ると、順哥の盗賊団が銃で脅し、来客達の金品を根刮ぎ強取しようとしていた。李は階下の彼の店の宝石を10分以内に持ってくるよう指示され、戻らなければ珊珊を殺すと言われる。老許は大スクープだと烏蠅にベルトに付けたカメラで強盗犯の顔写真を撮るよう命じ、また喪標も腕時計に仕込んだカメラでこっそり撮影して観葉植物の鉢に隠した。しかし烏蠅のカメラは順哥に没収され、3人は強盗団に捕まってしまう。絶体絶命の危機に陥った中、順哥の携帯電話が鳴り、李が婚約者を見捨てて通報して逃げたとの報告が入る。珊珊を殺せと順哥が命じたため、喪標が怒りの反撃を開始、強盗団は慌てて逃げた。珊珊と喪標の密着写真を使わないでくれと喪標が懇願するが、老許は社運が掛かっているからダメだと断る。そして珊珊は許しを請う李に、ネックレスを投げつけて去った。 その後、老許は喪標の家に行き、倒産覚悟で写真を返す。文句を言う老許にプレゼントだと腕時計を投げる喪標。おかげで強盗団の顔がバッチリ写っている写真を表紙に持ってきた「内幕」を出版することが出来た。 強盗団が国外逃亡を図った出国審査でサングラスを外すと、審査官や審査待ちの人達は「内幕」の表紙を見てニヤニヤ。当然、すぐさま警察に通報された。そして老許は警察から80万ドルの報奨金を授与された。そのお金で梁主任に借入金を返済し、広告代理店の何さんと新たな契約を結んだ。そこへ喪標に会いに珊珊がやって来て――。 劉兆銘(ラウ・シウミン)演じる順哥の強奪方法は「半斤八兩」で石堅(シー・キエン)演じる九叔を彷彿させる手口で、ちょっとニヤけてしまう。そして順哥の手下で幽霊に扮して老許を驚かせた屎忽龍役を演じた李海生(リー・ホイサン)は、「摩登保鑣」にも強盗団の一員として出演している。あ、そういえば今作で出版社に文句を言いに来たスタントマン(龍虎武師)を演じている太保(タイ・ポー)も「歡樂叮噹」で盲人役を演じてたっけ。太保は20年に開催された第39屆香港電影金像獎で最佳男主角(最優秀主演男優賞)を受賞している また、珊珊と李の婚約発表パーティーの招待客の一人として苑瓊丹(キングダム・ユン)が出演。苑瓊丹といえば、95年に亞洲電視で放映されたTVシリーズ「殭屍道長(霊幻道士 キョンシー・マスター)」で共演した林正英(ラム・チェンイン)とのロマンスが有名だ。 ちなみに、ホイ兄弟の次男・スタンリーは警官役でちょこっと出ている。 「スーパースターの梅芳芳の記事も…“愛犬と梅芳芳”、下らん」と喪標が呆れた表紙の梅芳芳、この芳芳のモデルとなっているのは言わずと知れた香港のスーパースター・梅艷芳(アニタ・ムイ)。歌后(歌姫)でありながら演技も達者な彼女は、「歡樂叮噹」や「神探朱古力」でも名コメディエンヌぶりを発揮している。 毎度のことながら、マイケルは91年4月開催の第10屆香港電影金像獎にて最佳男主角にノミネートされたが、今回も受賞ならず。 ♪97年の香港返還が何だ 97年なんかクソくらえ~という主題曲 “話知你97” を歌っているのは勿論サムだが、第10屆金像獎ではサムが最佳電影歌曲(最優秀主題歌賞)を受賞 といっても彼が主演した「笑傲江湖(スウォーズマン 剣士列伝)」の主題曲 “滄海一聲笑” によるものだけど。 マイケル、サム、リッキー(&スタンリー)のホイ兄弟が共演する作品は今作が最後となってしまった。実に悲しく、残念でならない。 新半斤八兩 Front Page 1990年8月24日(香港) 邦題 : フロント・ページ 日本公開 : 1992年2月6日 出品人 : 許冠文 監製 : 許冠文 導演 : 陳欣健 編劇 : 陳欣健、許冠文 制片商 : 許氏影業有限公司(Hui's Film Production) 演員 : 許冠文、許冠傑、許冠英、洪欣、劉兆銘、毛舜筠、秦沛、太保、李海生、葉榮祖、許冠武、苑瓊丹 音樂 : 周啟生 主題曲 : 許冠傑 語言 : 粵語(広東語) 票房 : HK$ 26,348,460(1990年第3位) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023.10.02 03:31:59
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