Pastime Paradise

　「Mr.Boo! マイケル・ホイ（許冠文）祭」第23夜の今宵は00年に公開された日本未公開作品「創業玩家」を御紹介。
　この作品もマイケルは主演のみで、監督は「雞同鴨講」「合家歡」と同じく高志森（クリフトン・コウ）が務めている。
　製作は嘉禾娛樂事業有限公司（Golden Harvest）、高志森影業有限公司（Ko Chi Sum Films）、そして中国の福建電影製片廠（Fujian Film）、中國電影合作製片公司（China Film）による。
　元々は「牛頭不搭馬嘴」というタイトルで97年に製作されていたが、農民を中傷しているとかの理由で97年以前は上映禁止となって公開が遅れた、というようなことがネットに書かれていたのだが…まぁ本当かどうかは知らんけど。

　マイケル演じる福青は中国・福建省で王小燕演じる母親や盧俊豪演じる息子の來福、娘の小英と暮らしている。福建は大紅袍が有名で、福青の祖父が高官だった頃にいくつか隠し持っており、それを家宝にしていた。
　葉榮祖（イップ・ウィンジョー）演じる肥叔が観光客を引き連れて福青の家にやって来た。福青は昔ながらの自家製連鎖式生産方法で農業を営んで儲けている。そこに河國榮（Gregory Charles Rivers）演じる彭丹が寄って来て、福青に合同事業を持ち掛ける。福青は長年考えていたホテル経営を提案した。駅や公安が近く、便利で安全な場所にある華僑大厦に前から目を付けていた福青は、営業権利やら内外装やらで銀行から80万ドル融資を受けることになるが、2年で返済可能だと説明し、彭丹も納得する。しかし彭丹が取り分8-2でホテルの全権管理も専門知識のある自分が持つと言うと、福青は7-3で自分が管理すると言う。現代的なホテル管理が必要だと彭丹が言えば、福青は農民が管理するホテルにすると言い、交渉は決裂した。
　農場を肥叔に売り、大都市で2日も学べばOKだと福青は來福を連れて香港へ。タクシーから数々のホテルを眺めた二人は、ハンバーガー屋に入る。注文に戸惑う福青に同郷だと親しげに声を掛ける男が。黄霑（ジェームズ・ウォン）演じるこの男は福青をパソコン健康診断に連れて行き、そこで福青は急性腎癌だと告げられる。落ち込む福青は男との会話で最後に腕時計を購入して家族に贈ることに。しかし時計はニセモノでまんまと騙されたのだった。
　翌日、袁富華演じる従弟から知人が働いているホテルに誘われる。そこは2つ星から5つ星になったホテルで、管理体制も含めて典型的な英国式ホテルだった。ホテル内で写真を撮りまくり、あちこち覗いてメモを取る福青の怪しげな様子をモニターで見ていた警備員は、劉雅麗（アリス・ラウ）演じるマネージャーのVivianに連絡。たむろしていた若者に服を取られた福青が下着姿で逃げていると、時計売りの詐欺師がホテル客を健康診断に誘っているのを目撃。男に掴みかかったところをVivianらに捕まる。警察官が若者を捕らえて服を持ってきたため、福青は開放された。もう十分だと福青は国に帰るが、女性に振られっぱなしの來福は愛を探すため香港に残る。
　福建に戻った福青は華僑大厦をモダンなホテルに改築すると村人に宣言し、従業員も村人を雇った。そしてホテルが開業し、オープンセレモニーには市長らを招き盛大に行った。しかし世界時計の時間は違うわ、ロビーのソファには村人が寝転んでいるわ、カフェの従業員は客の食べ残しを持ち帰り、蘇秘書は金を払わずサインで済ます有様。その様子を見て彭丹は笑う。おまけに備品を盗もうとした村人に、警察へ突き出せ！と福青は客の前で怒鳴りまくる。
　そんなある日、旅遊局の審査員がこのホテルに来ると聞き、4つ星を貰おうと喜ぶ福青。しかし羅家英（ロー・カーイン）演じる審査員がホテルに行くも、ゴミ箱からゴミが溢れ、照明は切れかけ、世界時計は全て針が無く、受付を尋ねると自分で探せと言われる始末。審査員に気付いた福青がプールに案内するが、村の六叔が勝手に釣堀にしており、そこへ市長が報道陣を引き連れて泳ぎに来たものの電気ウナギに感電。後日、省からの通達でホテルは営業停止に。従業員達は勝手に備品を持ち出し、村人は給料を払え、土地を返せと喚き、彭丹は高笑い。母は福青に家宝の大紅袍を渡し、香港で売ったら数十万の値打ちがあると言う。福青は香港でホテルマネージメントを学んで帰って来ると告げ、再び香港へ。
　従弟に紹介してもらい、Vivianの元でハウスキーパーとして働くこととなった福青は彼女から色々と厳しく指導される。備品を盗もうとする客を見つけた福青は会計待ちのところを呼び止めるが、Vivianは客を別室に連れて行き備品の金額を告げて現金かカードのどちらで払う？と冷たく尋ねる。警察に突き出すべきだと喚く福青に、Vivianは我々の客は泥棒ではないと穏便に済ませた。福青達が食堂で食事していると、Vivianが来て彼女宛の花束が届く。従業員達は彼女のダンナは出て行ったのに誰からだ？と噂する。
　ある日、また花束が贈られたVivianに誰からかしつこく詮索する従業員達を見て、見かねた福青は自分が贈ったと嘘をついてVivianを助けた。驚いたVivianは、福青に後でハネムーンルームに来てと誘う。同僚達にからかわれながら福青が部屋に入ると、Vivianからベッドやバスルームに来るように言われ、福青は必死に言い訳して逃れようとするが、Vivianは仕事で来ただけでプライベートは関係ないと怒り出した。ただ自分が新しくデザインしたこの部屋を試したく、新婚夫婦のフリをしてほしかった、福青はホテル内で唯一の内地人だから信じていたのに…と言い残して部屋を出て行ってしまった。夜、福青は花束を渡してVivianに詫びる。そして大紅袍をも渡されたVivianは担保として自身の結婚指輪を福青に渡す。福青は問題はこれだ、とその結婚指輪を即座に投げ捨てた。泣き付くVivianを福青は慰め、飲んで酔い潰れたVivianをハネムーンルームのベッドに寝かし、二人は一夜を共にする。
　福建に戻った福青は金を払えと集まる村人に囲まれるが、母親が駆け付けて彼らを一喝。福青はホテル再建を説き、みんなの今までのやり方は正しかったか？と一人ひとりに尋ね、もう一度自分を信じて頑張ろうと皆を説得する。
　そして迎えたホテルの再オープン。村人が協力して見違えるようになった。欠けた食器は処分し、ロビーのソファで寝転ぶ村人には空調費を請求して追い出し、ツケ払いにしようとした蘇秘書の車を自転車で追いかける福青。ちょうどその時、Vivianが福青のホテルを訪れて――。

　脚本を担当した張達明（チョン・ダッミン）はホテル前の土地の地主の息子で、パソコン操作担当の従業員役で出演している。旅遊局の審査員を連れて行った部屋で、彼が操作するパソコンにあの詐欺にあった健康診断ページが出て福青がクビを言い渡すシーンがあるが、あの詐欺師を演じている黄霑（ジェームズ・ウォン）はマイケルと同じ喇沙書院（ラ・サール中学校）出身で同級生なのだとか。黄霑といえば、マイケルの初監督作品「鬼馬雙星」にクイズ番組 “有上冇落” の司会者・黃不文役で友情出演している。
　羅家英（ロー・カーイン）は「富貴人間」に引き続き2度目の共演。でもって葉榮祖（イップ・ウィンジョー）おじさんは今作で何度目の共演だろう？6作目？

　福青の家宝・大紅袍。福建省北部、世界遺産にもなった武夷山という岩場が多い山で作られるお茶で、別名・岩茶の王様というらしい。樹齢300年超の原木はわずかに4本で、その希少性から上海のオークションに大紅袍20グラムが出品された際、落札価格が19万8,000元だったという。さっきググったところ日本円で400万円と出たが、その当時は250万円ぐらいだったのかな。とにかくかなり高価なお茶だそうな

　今作のVCDを現地で購入して初めて見た22年前、マイケルのベッドシーン（といってもただ裸で劉雅麗（アリス・ラウ）とベッドで寝ているだけ）にちょっぴり衝撃を受けた。たぶん「半斤八兩」で浮気調査でクラブに入ったマイケル演じる私立探偵の黃若思が、呉耀漢（リチャード・ン）演じる警長に踏み込まれた際の1シーンぐらいでしか、それまでマイケルのそういう場面を見たことがなかったからだ。劉雅麗に軽く嫉妬しちゃったりなんかして。うーん、羨ましい。
　とはいえ、その後動画視聴した李翰祥（リー・ハンシャン）監督の「一樂也」 や「聲色犬馬」にもそういうシーンはあったりなんかして。

　この作品は上映期間が2000年11月2日～10日とかなり短かった。まぁ香港だともっと短期間で上映が終了した作品もあるけれど。何か事情があったのか、単に不人気だったのか…。

　　　

　創業玩家　Funny Business　2000年11月2日（香港）
　出品人 ： 鄒文懷　監製 ： 高志森　導演 ： 高志森　編劇 ： 張達明
　制片商 ： 嘉禾娛樂事業有限公司（Golden Harvest）、高志森影業有限公司（Ko Chi Sum Films）、福建電影製片廠（Fujian Film）、中國電影合作製片公司（China Film）
　演員 ： 許冠文、劉雅麗、黄霑、羅家英、葉榮祖、李麗珍、張達明、河國榮、盧俊豪、王小燕
　音樂 ： 李漢金、溫浩傑
　語言 ： 粵語（広東語）
　票房 ： HK$ 48,920