Pastime Paradise

　「Mr.Boo! マイケル・ホイ（許冠文）祭」第25夜の今宵は04年に公開された「煎釀叄寶」を御紹介。
　“煎釀叄寶” というのは香港の一般的な屋台の軽食で、山盛りの揚物や詰物から3つ選ぶものだそうで（今は個数や価格は店によりけりらしい）、作品タイトルは主役の3人が “煎釀叄寶” のように決して切り離せないということから付けられたそうな。叄寶は3つの宝という意味だ。
　しかしそんな込められた思いも虚しく、邦題は「Mr.BOO! 花嫁の父」。
06年に大阪アジアン映画祭で上映された際の仮邦題は「Mr.BOO! 愛憎バトル」だったとか。確かに内容的には合ってるけど。

　マイケル演じる龍飛雁は幼い頃から武侠好きで、女侠の斗笠を被って遊んでいた。しかし羅莽演じる義侠心溢れる父親から、絶対に喧嘩はするな、インテリになって小説家になれ、と約束させられる。そして有名な武侠小説家となって快適な印税生活を送っているが、13年もの間スランプに陥り新作のアイデアが湧いてこない。更に飛雁を心配させているのは、同居している楊千嬅（ミリアム・ヨン）演じる娘・Sophiaのこと。彼氏がいるのかそれとなく探りを入れるも、Sophiaはいないと即答。しかし彼女は勤務先の社長で有名なプレイボーイである劉青雲（ラウ・チンワン）演じるFrankie（法蘭基）に密かに想いを寄せている。
　ある日、FrankieがSophiaの家に勝手にやって来て、自宅が火事になったので家が直るまで泊めてくれと言う。Sophiaは了承しながらパパにバレないよう大人しくしておいてくれとFrankieにお願いするが、早速Frankieは家の中をうろつき、飛雁の書斎に侵入して寛いでいた。そこへ何も知らない飛雁が戻ってきて、Frankieを泥棒と勘違い。Sophiaの説明で誤解は解けたものの、女の子と一緒にいて火事になったとのFrankieの言葉にカチンときた飛雁は、泊まることになったFrankieに様々な嫌がらせを敢行。疑う飛雁にSophiaとは無関係だと証明するため、美女を大勢呼んで飛雁宅でパーティーを開く。絶対にSophiaに手を出さないでくれ、と脅す飛雁にFrankieは命を賭けて誓い、その心意気に感じた飛雁はFrankieとすっかり意気投合。そこへ飛雁の10年来の恋人である金燕玲（エレイン・ジン）演じるBarbraが現れ、女の子と仲良くしている飛雁に激怒して出て行く。後日、Barbraの機嫌取りに次の新作を出したら結婚しようと告げる飛雁。
　飛雁宅に葉山豪演じる庭師・Alexがやって来た。Alexと電話で楽しそうに話すSophiaにFrankieはモヤモヤ、二人のデート現場に偶然を装って割り込んでしまう。しかしFrankieが誘った女の子達が来たものの、彼女達はAlexについて行ってしまい、SophiaとFrankieは取り残されて呆然。
　飛雁が自身の熱狂的な愛読者で、精神病院でも毎日功夫の練習は欠かさなかったというちょっとイカれた晉松演じる周永吉に功夫勝負を挑まれていた頃、Frankieは結婚し子供を作って落ち着きたいとSophiaに告げる。まずは相手を探すことだと元カノに声を掛けるが、そこでSophiaがずっと好きだった、彼女が断るなら私と結婚して！と大胆に告白。それじゃあ婚姻届を出しに行こう！と話は纏まり、二人は飛雁に結婚の報告をする。だが、結婚したら家族で暮らすと思っていたSophiaに対し、Frankieは家族とは別で一人で暮らすとのこと。怒った飛雁が襲い掛かるもFrankieは彼を跳ね除ける。追ってきたSophiaに結婚観が違いすぎると言い残して飛雁宅を後にした。
　しかしやっぱりSophiaを愛していると気付いたFrankieは飛雁宅に向かうが、飛雁とSophiaは武侠主題公園（武侠テーマパーク）「飛雁城」の開幕式ゲストに親子で呼ばれ、飛行機で旅立った後だった。広大な飛雁城内のカフェでSophiaが一人でぼんやりしていると、Frankieの姿が。飛行機と車で7時間掛けて来たというFrankieに最初は冷たく当たるSophiaだったが、Frankieに謝られてすっかり仲直り。改めて結婚の意志を固め、一緒に住むことにはなったものの、Sophiaは飛雁が心配だった。Sophiaは一緒に住もうと飛雁に提案するが、飛雁は家を守っている秘書だか何だかの許紹雄演じる丙良に電話し、養老院を探してくれと頼む。
　飛雁城で新たに小説を書き始めた飛雁の元に過去の武侠小説の登場人物が次々と現れ、まだ自分を使う気か、新しい人物を考えろ！などと色々文句を言ってきた。そこへ再び周永吉がやって来る。Frankieと周永吉が「射鵰英雄傳」のテーマ曲 “誰是大英雄” をバックに戦い、Sophiaも参戦する様子を見て、新しいアイデアが湧く飛雁。過去のキャラクターが別れを告げて去っていき、最後に残った一人が仮面を外すと正体は飛雁の父で、喧嘩をするなと言ったが今やられているのはお前の娘と息子だ、家族なんだからお前も闘えと言う。闘わずして新作が書けるか、と父に背中を押された飛雁も参戦し、何とか周永吉に勝利した。
　報道陣が待ち受ける中、ギプスでガチガチの姿になった3人が帰国。空港での記者会見で飛雁は数週間後に新作を出せそうだと報告。そこで改めてFrankieがSophiaと結婚してもよいかと飛雁に尋ねるが――。

　劇中、飛雁が湾仔の店で “煎釀叄寶” を購入する場面がふわっと入っている。自分を変えようか迷うFrankieに、君の生き方は男の夢だから迷うんじゃない、と飛雁が止めようとするシーンだ。結局Frankieは自分を理解してくれる人を求めて元カノに声を掛け、Sophiaの告白に到るのである。

　「鬼馬狂想曲」でマイケルをそっくりに演じた劉青雲（ラウ・チンワン）が、今作ではがっちり共演。でもって娘のSophiaを演じた楊千嬅（ミリアム・ヨン）がとってもキュート。
　Alex役の葉山豪（はやま ひろ）は香港で活動している日本人俳優さんで、友人がYAMAHAのバイクが好きだったから、それを逆さにして芸名を葉山さんにしたらしい。
　秘書だかハウスキーパーだか分からないけど飛雁宅にいる丙良役の許紹雄（ホイ・シウホン）は、マイケル初監督作「鬼馬雙星」にも大耳牛役で出演しており、30年ぶりの共演となる。

　飛雁が武侠小説家ということで、周永吉と3人の戦いの最中に飛雁の思い浮かべるアイデアの中には、金庸の武侠小説「射鵰英雄傳」の登場人物が色々と現れる。郭靖、黄蓉、東邪（黄薬師）、西毒（欧陽鋒）…。金庸好きな方はちょっと楽しめるかも。
　そして劇中流れる “誰是大英雄” は76年から佳藝電視で放送されていた「射鵰英雄傳」の主題曲で、作詞・作曲は黃霑（ジェームズ・ウォン）。「鬼馬雙星」でクイズ番組 “有上冇落” の司会者・黃不文役や、「創業玩家」での詐欺師役でお馴染みだ。

　しかし今作を “Mr.Boo!” とするのは何かちょっと違うような…。いや、だけど「智勇三寶」だってマイケルの単独出演作だけど “Mr.Boo!” が付いてるから、これもアリかな。
　
　　　

　煎釀叄寶　Three of a Kind　2004年7月27日（香港）
　邦題 ： Mr.BOO! 花嫁の父
　または Mr.BOO! 愛憎バトル　日本公開 ： 2006年11月4日
　出品人 ： 向華強　監製 ： 馬偉豪、江玉儀、曹彪
　導演 ： 馬偉豪　編劇 ： 馬偉豪、鄒凱光、陳詠燊、龍文康、李春暉
　制片商 ： 一百年電影有限公司（One Hundred Years of Film）、中國星集團有限公司（China Star Entertainment）、中國電影合作製片公司（China Film）、中國電影集團公司（China Film Group）、小馬歌製作室有限公司（Singing Horse Production）
　演員 ： 許冠文、劉青雲、楊千嬅、金燕玲、許紹雄、羅莽、葉山豪、晉松
　音樂 ： 羅堅　主題曲 ： 楊千嬅
　語言 ： 粵語（広東語）
　票房 ： HK$ 14,790,180（2004年第8位）